医学界に衝撃!治療なしで「HIV完治」した女性 驚きの研究結果で患者の人生が変わる可能性

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ほかにHIVの完治が宣言されているのはわずか2人。カリフォルニア州パームスプリングスのティモシー・ブラウンさんと、ロンドンのアダム・カスティリェホさんだけだ。2人ともがん治療のための壮絶な骨髄移植を受け、それにより免疫システムにHIVウイルスへの耐性が獲得された。

骨髄移植はリスクが極めて高く、ほとんどのHIV感染患者にとっては選択肢となりえないが、完治の報告によって「HIVの治療は可能」との希望が高まった。5月にはブラジルの研究者らがいくつかのHIV治療を組み合わせることで新しく治癒につながった可能性を報告しているが、別の専門家らはさらに治験を重ねる必要があるとしている。

「重要な新発見だと受け止めている」。オーストラリアのメルボルンにあるピーター・ドハーティ感染免疫研究所のシャロン・ルウィン所長は、今回の研究をこう評価する。「もちろん本当の挑戦は、これを3700万人のHIV患者にとって、どうやって意味のあるものにしていくかだ」。

ウイルス遺伝子を抑え込む仕組み

一部の人の体内では、ウイルスの侵入を受けてゲノム転写された細胞を免疫システムが時間をかけて追い詰めていた。しかし被験者を徹底的に研究したところ、ウイルス遺伝子がゲノムの増殖を許さない「隔離部分」に閉じ込められている可能性のあることがわかった、と研究論文のシニアオーサー(上席筆者)でボストンにあるラゴン研究所の研究員シュー・ユー氏(ハーバード大学医学部准教授)は話す。

同研究の被験者は、抗レトロウイルス薬を使用しなくてもウイルスを抑制できるエリート・コントローラーと呼ばれる人々で、HIV患者の1%を占める。

抗レトロウイルス薬を何年間にもわたって服用してきた患者の一部、中でも免疫システムを増進する治療を受けてきた患者は、今回と同じ結果に達する可能性があると研究者らは推測する。

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