労働力調査では、2020年5月の雇用者は5920万人、それに対して法人企業統計の4~6月期の人員は3389万人です。
したがって、労働力調査の数字が法人企業統計の数字の1.7倍程度になっていないと、おかしいのです。
この両者の関係はどうなっているのでしょうか?
休業者の扱いが、2つの統計で違う
この謎を解くカギは、休業者の扱いにあります。
ここで、「休業者」とは、仕事を持っていながら調査期間中に仕事をしなかった者です。雇用者の場合は、仕事を休んでいても給料・賃金の支払いを受けている者です。現在、その大部分は、雇用調整助成金によって支えられていると考えられます。
これは、労働力調査では、雇用者の中に含まれています。
労働力調査によると、2020年5月の休業者は423万人で、2019年5月の149万から274万人の増でした(図表3参照)。
上述した「労働力調査の数字が法人企業統計の数字の1.7倍程度」という換算率を当てはめると、「法人部門での休業者は249万人(=423÷1.7)程度」ということになります。
ところが、「法人企業統計における4~6月期の人員は、対前年比234万人減」と上で述べました。いま算出した249万人という数字は、ほぼこれと一致します。
■雇用されているが働いてない人々が大量に?
つまり、法人企業統計では、「昨年は賃金を出していたので人員に含め、今年は雇用調整助成金が賃金を支払っていて企業が払っていないので、人員にカウントしていない」と考えると、つじつまがあうのです。
すでに述べたように、休業者とは、「雇用されているが働いていない」人々です。
法人企業統計では「働いていない」あるいは「企業が賃金を支払っていない」という側面で捉えられ、労働力調査では「雇用されている」という側面で捉えられていることになります。
どちらの側面で捉えるかによって、現在の日本の労働市場の評価が大きく変わってしまうのです。
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