新薬承認のキーマンに流れる製薬マネーの驚愕 審議会委員への多額の金銭授受は妥当なのか

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毎回の審議会では事前に審議される薬が決められ、審議が行われた後にそれが薬としてふさわしいかの決が取られる。承認の決に参加する委員たちは公平性を保つため、事前に審議される薬の製造者と競合メーカーとの過去数年分についての利益相反(金銭授受)について自己申告を行う必要がある。1社から50万円以上の金銭授受がある場合には薬の承認の決への参加はできず、1社から500万円以上の金銭授受がある場合には審議そのものに参加できないなどの独自の取り決めがある。

あまり知られてはいないが、薬事・食品衛生審議会の委員名簿や議事録は厚生労働省のwebサイトから簡単に閲覧することが可能だ。ここに審議会の委員たちが自己申告した利益相反書も公開されている。

そもそも製薬企業から金銭的提供を受けている人たちがその企業が作った薬剤の承認業務に関与するというのは、ちゃんちゃらおかしな構造であることは間違いない。ところが、この薬事・食品衛生審議会委員への製薬企業からの金銭提供とその申告の正確さについてはまったく監査がされていなかった。事実、2015年には8名の薬事・食品審議会委員が不正な利益相反開示を理由に辞職に追い込まれるなど不正が後を絶えない。

薬事・食品衛生審議会委員への製薬企業からの支払い

そこで今回私たちは、独自に作成した2016年度の製薬企業からの講演・執筆・コンサルティング等の業務に対する審議会委員への支払い(C項目支払い)データベース(ワセダクロニクルHPにて公開中)を利用して、薬事・食品衛生審議会委員への製薬企業からの支払いについて検討した研究を発表した。発表した論文はアメリカ薬学系の一流医学誌である『Clinical Pharmacology & Therapeutics』誌で論文として2020年5月18日に公開された。ここでは一部その結果を紹介したい。

私たちは数ある薬事・食品衛生審議会の部会の中から特に薬の審議に関わる5つの部会(医薬品第一部会、医薬品第二部会、再生医療等製品・生物由来技術部会、薬事分科会、薬事・食品衛生審議会総会)の2017・2018年度に属する審議会委員について、製薬企業からの支払い、そしてその支払いと委員が記載した利益相反書の整合性について検証した。

まずは表1をご覧いただきたい。

(外部配信先では図や表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンラインでお読みください)

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