新薬承認のキーマンに流れる製薬マネーの驚愕 審議会委員への多額の金銭授受は妥当なのか

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確かに現時点でも独自のルールによって、自己申告で審議中の単一製薬企業から500万円を超える支払いが存在する委員は承認審議に参加できない取り決めがある。このような甘いルールで医薬品規制に関する意見や独立性を完全に担保することができるかどうかは疑問ではあることに加えて、今回の結果に見るようにそれがまったく無視され少なくない委員が不正に新薬承認の決に参加していたり、厚生労働省のずさんな対応に見るように利益相反についてのガバナンスが厳格に監視・運用されていなかったりする現状は、看過できない。

だが、政府の公的な医薬品規制を担うとはいえ、薬事・食品衛生審議会に所属する委員が製薬企業から金銭を受け取ること自体は適切に開示を行えば違法ではない。また、製薬企業と金銭的な関係があっても専門的な知識を有する委員の意見は審議にとって非常に貴重なものであり、患者にも利益があるだろう。

透明性の追求とガイドラインの厳格化が必要だ

そして実際には利益相反があっても製薬企業からの圧力や影響を受けていない可能性もある。しかし、現状に鑑みれば、不正や汚職を避けるためには、ある程度透明性を追求し、公益に携わる人物を規制するためのガイドラインは現状よりは厳格である必要があろう。

今回われわれが行った研究は、初めての薬事・食品審議会委員への製薬マネーを調査したものだが、いまだ検証が不十分な点がいくつかある。

第一に、本調査で使用したデータベースは私たちが多大なコストを割いて独自に作成したもので、2016年度についてしか検証が行えていない。最近2017年度のものも公開されたが、今後も継続的に検証を行う必要がある。

第二に、薬事・食品審議会委員による利益相反申告書と私たちが有するデータベースとの整合性を分析したが、このデータベースでは製薬協に所属する企業を中心とした78社の支払いしか確認できないため、開示を義務付けられていない製薬企業からの支払いについては今後検討する必要がある。

そして最も重要な検討課題は、本調査が製薬企業からの金銭関係が審議会委員の行動に何らかの影響を与えたかどうか証明するものではないことだ。各委員の議決に関するデータは公開されていないため、この点は私たち自身の力だけでは今後も解決することができない。今回検証できなかった点を含め、将来的には政府を巻き込みより信頼性の高い利益相反の開示システムを導入し、医薬品規制プロセスの透明性を高めていく必要があるのではないだろうか。

澤野 豊明 ときわ会常磐病院外科

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さわの とよあき / Toyoaki Sawano

1990年神奈川県横浜市生まれ。医師・医学博士。2008年横浜高校卒。2014年千葉大学医学部卒。2022年福島県立医科大学・大学院医学研究科卒。2014年に医学部を卒業後から東日本大震災および福島第一原発事故の被災地である福島県南相馬市で医師として勤務を始め、以降消化器外科医として被災地で臨床医をしながら、福島県内で放射線災害後の健康影響について研究を続けている。消化器外科医としての専門は胃、大腸などの消化管手術。研究者としての専門は、放射線災害時の健康弱者の健康問題全般と医療施設における避難。

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