日本の対韓世論の変化に無知な文在寅政権 安倍辞任で「対日姿勢を柔軟にすべき」との声も
――文在寅大統領や大統領府のスタッフらは、そもそも日本に関心がないのではという見方があります。
そうかもしれない。政権の最大目標は南北関係改善だから、対日関係には切迫感が無い。口では対話や関係改善が必要だと言いながら、具体策は何も提示しない。それゆえ韓国の保守派から、「左翼政権だから正義や公正、平等など理想主義的な美しい言葉は大好きだが、言っていることとやっていることが違う」と皮肉られている。例えば文在寅大統領が2019年のテレビ番組での国民との討論で突然、「韓国は日本の防波堤になって日本を守ってやっている」と発言したのは、その一例だ。
――「韓国防波堤論」は、かつて朴正熙、全斗煥政権時代に聞こえた冷戦期の言葉ですね。北朝鮮や中国、旧ソ連の脅威から日本や米国を韓国が防いでいるという論理でした。
冷戦期に韓国は「自由主義陣営の最前線」であるとか「反共の砦」と言われ、日本もそれに共感し、韓国への支援・協力を惜しまなかった。特に1980年代初め、日本は全斗煥政権から100億ドルもの「安保経済協力」資金を要請されたことがあったが、その時の根拠が「韓国防波堤論」だった。韓国は北朝鮮とその背後にいるソ連、中国の軍事的脅威から日本を守ってやっているのだから、防衛費のつもりで韓国に金を出せというものだった。
しかし現在の文政権は北朝鮮の脅威を否定し、南北協力を強調している。中国の脅威を語ったことなど一度もない。文大統領はいわゆる冷戦時代の安保論理を繰り返し否定してきた。それが突然、死語にも等しい冷戦時代の「韓国防波堤論」を持ち出したのだから驚いた。「北方の脅威」などというが、誰から日本を守ってやっているのか。そのこともはっきりさせずに「日本の防波堤」といわれても、にわかには信じられない。
支離滅裂、矛盾に満ちた文政権の対日姿勢
――あの発言の本音は何だったのでしょうか。
おそらく「日本にとって韓国は価値のある存在なのだ」ということを言いたかったのだろう。「国際的に韓国を高く売る」という韓国外交の伝統的な手練手管といえばそれまでだが、周知のように現在の文政権は一方では日本の重要性を無視し、「日本何するものぞ」の気分で反日を大いに楽しんでいる。「北の脅威」どころかむしろ「南北協力で日本に勝つ」などと公言しているのだから、もう支離滅裂だ。矛盾に満ちた政権なので、戦略的フレームが必要な外交の相手としては実にやっかいだ。
――外交面では、文大統領は「南北平和共存」一辺倒のように見えます。
それがこの政権にとってレガシーとして残すべき最大目標であり、そのためにすべてを投入している。アメリカのジョン・ボルトン大統領府特別補佐官の回顧録「The Room Where It Happened」を読んでよくわかったが、文大統領は「とにかく金正恩(朝鮮労働党委員長)を動かさなければいけない」という一念で、金委員長と会い、トランプ大統領と会っていた。金委員長には「トランプと(自分は)仲がいい、何とかする」と言い、トランプ大統領には「あなたこそが頼りなのだ」とおだててすり寄っている。
2022年5月まで、残る任期わずかとなった文在寅外交にとっては、対米外交も対中外交もすべて金正恩委員長の顔を韓国に向けさせ、南北和解・共存・協力体制に持っていくためにある。だから拉致問題の解決を訴え、独自の経済制裁を行い、ミサイルを近海に撃ち込まれ、「北朝鮮は安保上の脅威」と主張する日本は、南北平和共存には邪魔な存在なのだ。しかもボルトン回顧録がいうには、安倍はトランプに「北には用心しろ」と繰り返し言うので、文在寅は安倍が韓国外交を妨害したと思っている。南北関係で頭がいっぱいの文政権にとっては、日韓関係どころではないというのが正直なところだろう。
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