日本の対韓世論の変化に無知な文在寅政権 安倍辞任で「対日姿勢を柔軟にすべき」との声も

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――韓国側が気づくべき日本の変化とは、具体的にどういったことでしょうか。

今回、出版した著書では、「日本人の対韓被害者意識」という言葉を使った。近年、日本の世論には「日本は韓国に貶められている」「韓国から損害や迷惑を被っている」といった被害者意識が強く表れている。これが日韓関係の新しい構図の重要な背景だ。ただ日本人の対韓被害者意識というのは、現状もさることながら、実はこの地の地政学的な経緯により昔からあるものだということを、歴史をひも解いて日韓関係論の新たな視点として提示した。

――韓国側からすれば、「被害者はわれわれのほうだ」となりませんか。

黒田勝弘(くろだ・かつひろ)/1941年生まれ。京都大学経済学部卒。共同通信ソウル支局長、産経新聞ソウル支局長兼論説委員を経て現職。1978年韓国延世大学留学。ボーン・上田記念国際記者賞、菊池寛賞および日本記者クラブ賞を受賞。著書に『韓国 反日感情の正体』『隣国への足跡 』『韓国人の研究』『韓(から)めし政治学』など多数(写真:尾形文繁)

朴槿恵・前大統領は「(日韓の)加害者と被害者の立場は1000年経っても変わらない」と述べたことがある。これが韓国の対日歴史観の基本で、韓国は永遠の対日被害者というわけだが、あまりにも短絡、短見だ。韓国人自身、国際関係論を語る際に「永遠の友も永遠の敵も存在しない」と言うように、歴史的な加害・被害の関係はいつでも変わりうる。

世界遺産の指定をめぐる問題でユネスコに指定取り消しを求めたり、東京五輪がらみで“フクシマ風評被害”を扇動している。パラリンピック金メダルにも“旭日旗難クセ”をつけるなど、その反日姿勢に日本の世論は「もういい加減にしろ」と辟易し怒っている。これらについて、日本人は韓国による“日本いじめ”だと思っている。

加害者・被害者という構図は無用に

――日本でも韓国との関係について、負担、重荷のように感じる人が増えてきました。

著書では、昨年の対韓貿易管理強化という名の経済圧力ないし“制裁”を検証、総括している。この問題は日韓関係が過去最悪になった徴用工問題と密接に絡んでいる。ここで日本が韓国に対して厳しい姿勢で臨んだことにより、「歴史を背景にした日本の対韓配慮や遠慮はもうないのだ」というメッセージが伝わったことは、日本の対韓外交の画期的な転機になった。

不買運動を含め日本にとって一定の被害はあったけれど、一方で「日本がそこまでやるか、日本は変わった」という反韓・嫌韓感情下の日本の現実を知らせる効果はあったと思う。つまり加害者・被害者という固定したフレームワークではもう日韓関係は考えられない。このことを私は、「歴史まみれの韓国」に対し「歴史離れの日本」と図式化した。

――保守政権だった朴槿恵政権も、革新政権の文在寅政権も対日観は変わらないということですね。

現実の韓国は大きくて強い国になり、国際的にも存在感のある国になった。それなのに日本が相手となると、相変わらず歴史の固定フレームで”被害者コスプレ”を楽しんで日韓関係を悪化させている。日本が変わることで韓国の対日観を変え、それが彼らの武器になってきた歴史カードを“無力化”させる必要があることを新著の結論にした。

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