たとえばこの連載は、取材・執筆する僕が30代後半の男性だから成立している部分があると思う。ライターの先輩(女性)からは、「女のライターが女に対してあんなにシビアな突っ込みを入れると殺される」との感想が寄せられた。確かに、異性相手だから互いをライバル視せずに許し許されている面がある。もし「エリート美男」を取材する企画だったら、こんなに楽しく取材して伸び伸びと書くことはできなかっただろう。
10年目でも現場主義
たまに迷いながらも仕事に没頭している吉野さん。入社10年目になるが、社内で出世をしていく意志はない。責任を負いたくないのではなく、現場を離れたくないからだ。
「外に出て人と話してもの(番組)を作るのが楽しいので、ずっとやっていたいです。偉くなるともの作りはできなくなるでしょう。管理職の面白さもあるのかもしれないけれど、私には面白いとは思えません」
負けず嫌いを自認する吉野さんだが、肩書で同期に抜かれても何も感じないという。現場が好きだから公私の区別なく働いている人が多いマスコミ業界においては、「仕事ができる人が昇進する」とは限らず、「昇進したい人が昇進する」ケースが少なくないことをわかっているのだろう。
起きている時間のほぼすべてを捧げている会社に対して、吉野さんはドライな目線を持ち続けている。転職は考えていないが、現在のテレビ局に身をうずめるつもりもない。
「うずめようとしても、会社がなくなってしまうかもしれませんから。テレビ局は潰れない、なんて思っていません。本当です。やりたいことを割とやらせてくれる会社には、すごく感謝しています。でも、会社を愛してはいません。仕事は愛していますけどね。名刺交換をするときには会社の人間でも、最終的には『あなただから取材に応じる。あなたがディレクターだから協力する』という関係を築きたい。そういう仕事がどれだけできるかが勝負だと思います」
社内人事よりも目の前の仕事に関心がある吉野さんのような人が、実際は会社の維持・発展に最も貢献している気がする。上智大生の特徴であるという「夢見がち」な美徳を忘れず、格調の高い番組を作り続けてほしい。
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