堺雅人「半沢直樹で見せる演技の違和感」の正体 「多彩な感情表現」できるからこそもったいない

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堺が出演した中で大好きな作品がふたつある。ひとつはなんといっても、『リーガルハイ』(シーズン2はリーガル・ハイ)。古沢良太脚本、2012年と2013年にフジテレビで放送された名作だ。

ここ10年間で、10本の指に入る傑作ドラマといってもいい。どんでん返しに溜飲の下がる結末、風刺がきいて批評性の高い展開とセリフ、時代劇に対する愛とオマージュ。連ドラによくある中だるみが一切なく、テンポも面白さもフルスピードのまま全話駆け抜ける、稀有なドラマだった。

なぜ「リーガルハイ」に惹かれるのか?

堺が演じた古美門研介(こみかど・けんすけ)は、高慢で毒舌、拝金主義の弁護士。裁判では負け知らずだが、性格の悪さとやり口の汚さで、法曹界の嫌われ者。超絶長ゼリフ(主にイヤミと皮肉と悪口)を早口で完璧にまくしたてる姿に、胸を射抜かれた。

非常に失礼な話ではあるが、2倍速で観てもはっきりきっちりわかるのだ。滑舌がいいとかそういうレベルではない。吐き出す言葉が「記憶したセリフ」ではなく「思考の末に漏れ出す言葉」に聞こえた。堺本人の脳で生み出したかのような、自然かつ流暢な言霊の機関銃。しかもコミカルな動きとムカつく表情もセット。よくもまあ、同時にそんなことができるな、リチウムイオン電池で動いてんのかな、と思うほどの精巧さ。そしてものすごくおかしい。ドヤ感あふれるコントではなく、言葉と間合いで笑わせる上質のコメディだったのだ。

さらに、決して正しい人とは言い切れない。政治と社会への辛辣な皮肉は胸がすくし、ある意味正論を吐くときも。ただし、「人のため」にという義憤で正義をふりかざすことはほとんどなく、すべては金次第の銭ゲバ弁護士。七三分け、いや八二分けのとっつぁん坊や風に幼稚な言動、世間に迎合して善人ヅラなど決してしない、正しくない人だからこそ、惹かれるものがある。

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