安倍体調不安で「二階と菅」の不気味な急接近 「ポスト安倍」めぐり、重ねる会談と広がる憶測

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政権危機もささやかれる中で会談を重ねる二階、菅両氏は、「菅さんは立派な指導者でポスト安倍の有力候補」(二階氏)、「二階さんが党をしっかり主導してくれている」(菅氏)などと互いに熱いエールを送り合う。ただ、そのこと自体が「ポスト安倍をにらんだ両氏の権力拡大戦略」(自民幹部)と受け取る向きもある。

二階氏は81歳、菅氏は71歳。10歳の年齢差はあるが、政治家としての共通点は多い。両氏とも国会議員秘書を長く勤めて政治家修行をし、二階氏は和歌山県議、菅氏は横浜市議を経て中央政界入りしたいわゆる「叩き上げ」だ。

両氏とも観光業界との関わりが深く、コロナ感染第2波の最中の7月下旬に、各界から噴き出す反対論を押し切って菅氏が「GoToトラベル」の前倒し実施に踏み切ったのも、二階氏の後押しがあったからだとみられている。

たたき上げvs世襲エリート

地方政治を経験した両氏は、中央政界入り後も地方振興に力を入れ、二階氏の発案で9月に発足する地方創生関連の議員連盟では、菅氏が呼びかけ人に名を連ねている。両氏はまさに「土の匂いのする政治家」(古賀誠元幹事長)の代表格でもある。

これに対し、安倍首相と内閣の大黒柱の麻生氏は、どちらも祖父が首相という名門出身で、代表的な世襲政治家だ。若手時代に「都会育ちのお坊ちゃん」(自民幹部)と揶揄されてきた点も共通しており、「苦労人」の二階、菅両氏の対極に位置する。このため、政界では「安倍、麻生両氏は籠に乗る人で、二階、菅両氏は籠を担ぐ人」と色分けされてきた。

ただ、ポスト安倍政局では菅氏が有力候補と目されるなど、状況は変わりつつある。政界では安倍、麻生、二階、菅の4氏が「それぞれキングメーカーを狙っている」(自民長老)と見る向きもある。

二階氏と菅氏の接近は、安倍首相と麻生氏による後継選びに対抗する動きともみられている。このため、自民党内では「すでに『安倍・麻生対二階・菅』の権力闘争が始まっている」(幹部)との見方も出ている。

安倍首相の体調次第ではあるが、当面は9月中に予定されている党・内閣人事が政局の焦点となる。これまでは安倍首相が後継者と期待する岸田文雄政調会長の幹事長就任など、現体制を一新する可能性も取り沙汰されてきたが、安倍首相の健康不安により「人事自体が先送りされるか、やっても小幅にとどまる」との見方も浮上している。9月に入っても現状が続けば、安倍首相が人事の主導権を握るのは困難と見る向きが多いからだ。

「二階外し」を伴う岸田幹事長説についても、「岸田氏を評価していない二階、菅両氏が抵抗すれば無理」(自民幹部)との見方が支配的だ。このため、安倍首相が退陣表明せずに体調不良を押して人事を強行しても、二階・菅連合に主導権を奪われる可能性があり、「そのこと自体が安倍首相の求心力をさらに低下させて、結果的に早期退陣につながる」(自民長老)との声が広がっている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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