安倍体調不安で「二階と菅」の不気味な急接近 「ポスト安倍」めぐり、重ねる会談と広がる憶測

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こうした安倍首相の体調不安説に伴い、「党と内閣の事実上の主役」(自民幹部)となったのが二階氏と菅氏だ。両氏の動きに、政界だけでなく国民の注目も集まりつつある。

菅氏は「首相はこれまで通り執務を続けている」と繰り返し、二階氏も「首相を全力で支えるのが自分の務め」と語るが、その表情には近い将来の「ポスト安倍」候補を差配しようとの気概もにじむ。

二階氏が幹事長に就任したのは2016年夏。それ以来、第2次安倍政権は麻生太郎副総理兼財務相と二階、菅両氏が「政権の3本柱」として安倍1強を支えてきた。ただ、3氏の首相との距離は三者三様で、相互に牽制し合いながら、それぞれの立場で内閣や党を動かしてきたのが実態だ。

二階・菅氏は親密ぶりをアピール

首相経験者でもある麻生氏は、安倍首相の長年の盟友で後見人を自任している。「首相の精神安定剤」として独自に振る舞い、危機管理や人事を担う菅氏と重要な局面での意見対立も目立ってきた。

一方、自民党ナンバー2として党運営を委ねられた二階氏は、「百戦錬磨の寝業師」(自民幹部)として党内ににらみを利かせ、安倍首相も「最も政治的技術を持った人」と評価してきた。ただ、野党の保守系議員の取り込みなど「政界駆け込み寺」と揶揄される二階派の露骨な拡大戦略で、麻生氏や岸田文雄政調会長ら他派閥の領袖とのあつれきも生じている。

これまで「つかず離れずの関係」(自民幹部)を続けてきた二階、菅両氏だが、2019年9月の党・内閣人事で安倍首相が岸田氏の幹事長起用を模索した際に、菅氏が二階氏続投で安倍首相を説き伏せた辺りから、連携が深まったとされる。安倍政権がコロナ対応で迷走した通常国会の閉幕前後から、政局の節目ごとに会談し、親密ぶりをアピールしてきた。

安倍首相の体調不安説に政界が騒然となっていた20日夜も、両氏は国会近くの日本料理店で会食した。両氏の会談は3カ月連続で、約2時間半にわたった密談の内容も「政局の分析と対応が中心」(二階氏周辺)だったとされる。

与党内では「首相の体調不安も踏まえ、党・内閣人事の行方や衆院解散の可否、さらにはポスト安倍候補の品定めなどで、本音を語り合った」(閣僚経験者)との憶測も広がる。

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