2つ目の戦略は、「生産性戦略」をとり、自社の低生産性にメスを入れることである。
コロナの影響で、多くの企業は操業停止を余儀なくされ、立ち止まらざるをえない状況に追い込まれた。
コロナによる「需要の蒸発」というネガティブインパクトは甚大だが、その一方で、日本企業に長年巣食っていた問題もあらわになった。
行く必要のない「不要な通勤」、結論の出ない「不要な会議」、ただ飲み食いするだけの「不要な出張」、意味や価値のない「不要な業務」、だらだらとオフィスに居続けるだけの「不要な残業」……。
すべてが止まったからこそ、会社という組織がいかに「不要不急」なものに汚染されているかという「不都合な真実」があからさまになった。
在宅勤務を余儀なくされることになったことで、「オンライン化」や「リモートワーク」という新たな選択肢を手に入れたのだが、本来やる必要のない会議をオンラインで行ったところで意味はない。
「手段」を議論する前に、「業務」をしっかりと見直すことが肝要だ。何が「必要な業務」で、何が「不要な業務」なのかを仕分けし、「何をやめるのか」を決めることが大切である。
3つ目は、「成長戦略」を描き、持続的な成長へ向けて踏み出すことである。
当面私たちは既存事業を中心に「コスト構造を見直し、しっかり稼ぐ」ことに力を注がなくてはならない。
しかし、それだけでは未来の展望はまったく見えてこない。足元を固める一方で、私たちは新たな可能性を積極的に模索し、早期に新たな成長エンジンを確立しなければならない。
近年、多くの経営者が「両利きの経営」という考え方を打ち出している。「既存事業の深耕」と「新規事業の探索」の両軸を同時並行的に進めるという戦略である。多くの日本企業は「既存事業の深耕」には熱心だったが、「新規事業の探索」をうまく進めてきた企業は稀である。
その理由の1つとして、野中郁次郎先生(一橋大学名誉教授)が指摘する「オーバーアナリシス」「オーバープランニング」「オーバーコンプライアンス」があげられる。「過剰な分析」「過剰な計画づくり」「過剰な法律的縛り」という「3つの過剰」が起業家精神を減退させ、過度にリスクを回避する動きにつながってしまっている。
コロナ後に同じ轍を踏んだのでは、新たな成長エンジンを育てるのは困難である。20~30代という若手の思い切った抜擢、専門性と経験を有する外部人材の活用、評価制度・報酬制度の見直し、社長の直接的関与など、新たな成長エンジンの構築を推進する「インキュベーション・プラットフォーム」を確立しなければならない。
ポストコロナの社会には「新たな需要」が確実に生まれている。これをものにするためには、過去の延長線上にはない非連続な取り組みや努力が不可欠である。
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