一過性的な「需要の蒸発」であれば、少しずつでも回復が期待できるが、世界的な感染が収束しない限りインバウンドや海外旅行、出張需要、さらには通勤移動など、ほぼすべての「移動」は元には戻らない。
実際、8月に入っても世界の飛行機の3分の1(約8600機)は地上に留め置かれたままだという。2001年のアメリカ同時テロなどの後も、これほど大規模で長期の駐機はなかった。
観光産業など「移動」に関連する需要の喚起でなんとか凌いできた日本が、「移動の蒸発」によって深刻な状況に陥るのは必然である。秋から来年にかけて、失業、廃業、倒産など負の連鎖が起きてくるだろう。
もちろん一部の業界、企業は「コロナ特需」の恩恵を受けている。しかし、それは全体で見れば限定的と言わざるをえない。多くの企業は、目の前の現実を直視し、私が本書で指摘していることを断行しなければならない。
コロナ禍を奇貨として日本企業が再生するために断行すべき経営戦略とは何か。ここでは4つの経営戦略を紹介する。
「必要」と「不要」をしっかりと見極める
1つ目の戦略は、いまの厳しい状況を生き延びるための「サバイバル戦略」である。
コロナ・ショックの本当のインパクトが訪れるのは、これからが本番である。多くの企業は、しばらくは「茨の道」を覚悟しなければならない。赤字が続く企業は、いましっかりと「止血」をしなければ、その先はない。
ビジネスの縮小によるダメージを最小化するには、しっかりと「守りを固める」ことが肝要である。安全運転を志向し、リスクを回避し、堅実経営を心がけなければならない。
キャッシュフローを重視し、無駄な出費を抑え、売れる資産は売却し、なんとかこの状況を耐えなくてはならない。少なくともむこう1年程度は、慎重な態度でのぞむことが必要である。
しかし、じっと耐え忍び、慎重になるだけでは「守り」を固めたことにはならない。「守りを固める」とは、「堅牢な橋頭堡をつくり上げる」ことである。
「過剰な雇用」を見直して、「人員の適正化」に着手するなど、これまで手をつけることができなかった「聖域」にしっかりと切り込むことが必要だ。
また、目先の売り上げをしっかり確保する努力も欠かせない。こんなときだからこそ、営業を強化し、顧客密着度を高め、目の前の案件を確実に獲得する泥臭さが必要だ。
全社一丸となって、できることはすべてやり切る覚悟と実行が求められている。
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