朱里さんから1通のメールが届きました。
「私、やっぱり東京に戻ったほうがいいのでしょうか。私は3月下旬にUターンしてきているのに、最近になって近所の人から母が呼び止められて『朱里ちゃん、東京から来てるんだって?』なんて少し嫌そうに言われたりしたみたいで。疎外感がすごくて体が震えるんです」と。
筆者も先日、宮城県の幼なじみに「今年は帰省を諦めるね」なんて連絡を取っていた際に、「そうしたほうがいいよ」とスパッと言われたので、何かあったのか聞いてみると、「隣町の人がね、先日東京に遊びに行ったみたいで、そしたら近所の人から誹謗中傷がたくさん来て、引っ越しに追い込まれたんだよ」と驚く返事がきました。まさに村八分が起きていたのです。
地方は高齢化も進んでいますし、医療機関にも限界がありますので不安が大きくなっているのもよく理解できます。しかし、引っ越しに追い込まれるまでとは深刻な状況でした。
朱里さんは「東京に住んでいた」というだけでご近所の方から“コロナ”と見られてしまうことに恐怖を感じていたのです。ましてや、元をたどれば一人暮らしの母が心配でUターンしたのに、自分がいることで母親に迷惑がかかるのではないかと朱里さんの心中はとても複雑なものでした。
結婚・出産問題に関しては「恋人がいない状況で、今は結婚なんて考えていないし、したいとも思っていない。大事な人と出会ってから考える」と自分の思いをきちんと伝えてからは、母親も「こればっかりはご縁だからね」と理解してくれ、関係も回復。平穏な生活を取り戻した矢先のことでした。
もちろん母親はこれに対し「うちの娘は3月に帰ってきていてその後東京には一度も行っていないし、戻ってから体調を崩したことはないので大丈夫です」とその都度返事をしてご近所への理解を求めているといいます。
状況が心配になった筆者は、メールではなくオンラインでお会いしたい旨を伝え、お会いすることに。
画面を開けると、朱里さんの隣に母親が一緒にいました。
「なんだか最近私も母も夜寝るときに胸のあたりがチクチク痛くなるんです。あとは喉のあたりが圧迫される感じがして違和感があって、夜寝れなくなるんです。循環器と耳鼻咽喉科、内科とまわって検査しても、2人とも問題なしでした」と朱里さん。
疑いの目で見られても毅然とした態度をとるべき
朱里さん親子の置かれた状況を考えればこのような症状が出るのも理解できます。
ストレスとは無意識のうちに蓄積されていくもので、それが限界に近くなるとこのようなストレス症状が出てくるものです。
ましてや長らく住んでいる地域の人たちに、疑いの目で見られていると考えるだけで相当な不安とストレスです。
身体の症状に関しては、悪化していけば生活のクオリティーが下がってしまいますので、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)という安心作用のある漢方を担当医や近くのドラッグストアの薬剤師に相談したうえで購入して試してみるように促しました。
そして、朱里さん親子には「今はおつらいでしょうけれど、どんなことがあっても毅然とした態度でいるのがいい。悪いことなどしていない。という気持ちを忘れずにいてくださいね」ということをお伝えしました。
コソコソすれば“あ、やっぱり”と思ってしまうのも人ですし、逆に、毅然としていれば、“あれ? なんか大丈夫みたい”と徐々に周りの人の気持ちは変わっていくものです。
母親は「娘が戻ってきてくれて安心です」と言って喜んでいましたし、画面の向こうで並ぶ姿がとても和ましい光景でした。現在、朱里さん親子にとってこの状況を乗り越えていく大きなカギは、親子二人三脚で強い心を持つということなのかもしれません。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら