賃貸住宅経営を安易に始めた人の悲惨な末路 相続対策の土地活用、巧みな営業トークに注意

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土地オーナーは、所有する土地に建物を建てたときから、賃貸経営をしなければなりません。賃貸管理の仕事は、「入居者募集」「建物メンテナンス」「家賃回収」「入居者対応」など多岐にわたります。代表的な賃貸管理の方法としては、自主管理、一般管理、そしてサブリースの3つがあります。

自主管理は、オーナーやその近親者が自ら管理を行う方法です。メリットは管理会社に支払うお金がかからないことですが、それ以上に手間がかかることがデメリットです。一般管理は、物件の賃貸管理全般を事業者に委託する方法です。そしてサブリースとは、マンションやアパートを不動産会社や建設会社が一括で借り上げ、貸主(転貸人)として第三者へ転貸する方法です。

およそ8割の不動産オーナーは、サブリースもしくは一般管理といった形式を採用し、手数料を払う代わりに、管理会社に不動産管理の全般を担ってもらっています。しかし、サブリースと一般管理とでは、メリットはほとんど変わらないのですが、デメリットは大きく異なります。まず、管理会社に支払う費用が高額という点です。

一般管理の場合、賃料と共益費の合計額から5%前後を支払うのが相場に対し、サブリースの場合10%以上も管理会社に支払うケースがあります。さらに、サブリースの契約の多くは、共益費を受け取れないケースが多く、長期的な収益を比較すると大きな損失になります。

新築時のサブリースはオーナー側の損失が大きい

次に、サブリースでは必ず数年おきに賃料減額交渉が入る点も覚えておきましょう。サブリースには、30年同額賃料の借り上げではなく、賃料相場に併せて借り上げ賃料自体は減額する前提の30年契約であること、数年ごとに賃料減額交渉が入ること、条件が合わなければ契約が解除になる場合もあることといったリスクがつきまといます。

また、競争力が高く最も高い家賃が取れる新築時は、サブリース事業者に利益を取られてしまいますので、オーナーにとっては損失です。新築時は、わざわざ一括借り上げという高い手数料が発生する方法を選ばずとも、一般管理ないしは自主管理でもきちんと入居者は入ります。むしろ、新築時にすら入居者がつかないのであれば、そもそもその賃貸経営プランは、間違っているということになります。

サブリース(転貸)がこの業界で始まったのは40年ほど前です。その時代は、需要に対して賃貸住宅が不足していたため、家賃下落も空室リスクも今ほど大きくなく、儲けがある程度あったからこそ成り立っていた部分がありました。賃貸住宅があふれ、人口も減少フェーズに入った今、同じやり方でうまくいくはずがありません。

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