鉄道「ビッグ3」、2社統合で勢力図どう変わる? 欧州委、アルストムのボンバルディア買収承認
欧州や日本の技術を下地としている中国の高速鉄道と異なり、ゼロから高速列車を作り上げたフランスとドイツは日本と同様、数少ない独自の高速列車技術を保有する国だ。
アルストムのTGVとシーメンスのICEはその技術の結晶である。その2つが同じ会社の製品になれば、市場は事実上、1社による寡占状態となってしまうことは避けられない。
シーメンスは当初、ICEなど高速列車技術を他社へ期限付きで供与するという提案を出していたが、完全な譲渡ではなく、しかも期限付きという細部を濁した表現となっていた。これでは欧州委員会が両社の統合を拒否した理由もうなずける。
ボンバルディアは高速列車を譲渡へ
ではボンバルディアには、アルストムと重複したり、競争上の懸念が生じたりする製品はないのだろうか。
総合鉄道メーカーと言われるだけあって、ボンバルディアも非常に多くの製品を保有しており、その中には高速列車関連も含まれている。今では日本でもよく知られるようになった、日立レールS.p.A(日立製作所のイタリア現地法人)で製造される高速列車、ETR400型の基礎となるプラットフォームは、ボンバルディアの「ゼフィーロV300」と呼ばれるものだ。
これは日立レールS.p.Aの前身であるアンサルドブレダがETR400型を製造するにあたり、ボンバルディアの高速列車プラットフォームをベースとしていたためで、日立がアンサルドブレダを買収してからは、日立がETR400型の製造やメンテナンスを引き続き受け持つことになった。ETR400型は、イタリア向け車両50編成の納入は完了したが、フランスおよびスペインの高速列車事業へイタリアが参入することになり、追加で製造されることが決まっている。
ゼフィーロV300プラットフォームは、欧州委員会が今回の買収を承認するうえで、他社へ譲渡することが条件とされている。譲渡先について明確な情報はまだ示されていないが、すでに多くの製造実績を持つ日立レールS.p.Aが筆頭候補になることは想像に難くない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら