JT、10月の「たばこ50円値上げ」への周到戦略 たばこ増税で1箱500円超の商品も登場する

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――日本国内の市場はどういう状況ですか。

緊急事態宣言を受けて人が移動せず、外出しなくなった影響が短期的には大きく出た。コロナ禍以前は会社の喫煙所や飲食店などで喫煙していた。

てらばたけ・まさみち/1965年生まれ。京都大学工学部卒業。1989年に日本たばこ産業(JT)入社。海外事業を統括するJTの子会社「JTI」副社長を経て、2018年1月から現職(撮影:今井康一)

だが、緊急事態宣言下では会社に行かない。飲食店にも行かない。公共の喫煙場所もほとんどが閉鎖された。喫煙場所が家の中か家の周りに限定された。

国内に関していうと、6月には期初に計画した通りの数字に戻っている。もちろんコロナの影響がいつまで続くのかは分析しきれない。ワクチンができあがっても世界中に行き渡るまでの時間を考えると、新興国などは需要が回復するまでに2~3年かかることも覚悟しておかなければいけない。

ただ需要は底堅く、コロナによって劇的に喫煙の機会が減少したとは言えない。コロナ禍は生活スタイルに大きな変化を与えると言われるが、たばこがまったく吸われなくなる世界がやってくるとは思っていない。

10月の「50円値上げ」にどう挑む?

――10月のたばこ税増税にあわせた値上げで、1箱500円を超える商品も登場します。コロナ禍で消費者の財布の紐が締まっている中で値上げは受け入れられるでしょうか。

平均50円程度の値上げを行う予定となっている。当社の立場からすると、国内の利益の安定化をしっかり図っていく必要がある。

価格が上がることで販売数量が落ちるなどのネガティブな影響はあると見ている。より低い価格の商品へと流れていく動きも起きるだろう。それに対する受け皿として「リトルシガー」(作り方の違いから紙巻きたばこよりも税率が抑えられるたばこ)という低価格商品を用意している。全体の売り上げが大きく減少するとは思っていない。

可処分所得に対する紙巻きたばこの価格を各国で比較すると、1箱1500円が平均的なイギリスなどと比べて日本はまだ低い水準にある。だから価格を上げてよいという話ではないが、純粋に単価だけを比べるとまだ低いとも言える。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

一方、加熱式たばこのユーザーは、支払いをキャッシュレスで行うことが多い。一般的にキャッシュレス決済では、価格が多少上がっても購入を続ける傾向があるとされる。

また、加熱式たばこはデバイス本体(加熱するための電子機器)に1万円ほどかかることもある。デバイスを買ったうえで交換式のスティックを購入することになるので、紙巻きに比べると初期投資が大きい。少し価格が上がったとしても購入し続ける傾向が強い商品だとみている。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では、加熱式たばこのシェア拡大戦略や本社移転の狙いなどについても語っている。
兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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