JT、10月の「たばこ50円値上げ」への周到戦略 たばこ増税で1箱500円超の商品も登場する

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JTは、紙巻きたばこに近い吸い応えを訴求した新製品を7月に投入した(記者撮影)
新型コロナは人々の喫煙習慣にも影響を及ぼした。外出自粛によって職場や飲食店での喫煙機会が減少。その一方で、火を使わず臭いも少ない加熱式たばこのニーズが高まった。
そのような変化を肌で感じているのが、日本たばこ産業(JT)の寺畠正道社長だ。JTは紙巻きたばこで世界シェア4位、日本国内ではシェア1位を誇るが、加熱式たばこの国内シェアはわずかに1割程度。「アイコス」のフィリップ・モリス・インターナショナルや、「グロー」のブリティッシュ・アメリカン・タバコの後塵を拝している。
今後のたばこ市場にどう向き合っていくのか。2020年1月からたばこ事業本部長を兼任し、自ら新商品の開発にも携わる寺畠正道社長を直撃した(取材はオンラインで行った)。

停滞する新興国のたばこ販売

――JTの利益の過半を占めるのが海外です。コロナ禍で海外の市場動向は変わったのですか。

先進国と新興国で傾向が分かれた。欧米などの先進国ではたばこの販売数量が総じて堅調だった。国内需要が高まった国もある。例えば、たばこの税率が高いイギリスでは、(自国より税率の低い)スペインやフランスでたばこをまとめ買いする消費行動があったが、ほかの地域に移動することが難しくなったので国内で買うようになった。

逆に新興国では、所得の減少や将来不安が生まれたことにより、たばこの販売数量も停滞した。先進国と差が出た理由は、政府による国民への迅速な支援だ。日本でも(国民1人に)10万円を給付する特別定額給付金があったが、そのような支援が欧米諸国では割と早めに行われた。それが消費や生活に対する不安を取り除く要因になり、たばこの購入にも影響を与えた。

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