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今のムードを支えている市場心理は「FED(アメリカの中央銀行)にとって株式市場は、すでに『TOO BIG TO FAIL』(大きすぎて潰せない)になった」という安心感だ。

具体的に言えば、コロナで実体経済の急回復が見込めない中、もしまた株が下がると、FEDは前回の通算3兆ドルを超える、さらなる莫大なマネーを刷ってサポートをしなければならない。

「それに比べれば『ついにレッドライン超えた』などといった批判があろうとも、今の株のユーフォリア(熱狂)を維持するのが得策」という判断をFEDはするだろう。つまりFEDは『絶対に』株式市場を再び崩壊させることはしないはずだ」。これが今のウォールストリートの、個人投資家向けのセールストークだ。

中央銀行バブルが生み出す「熱狂」は続くのか

とはいえ、実のところ、FEDはすでにバランスシートの拡大を止めている。昨年の9月のレポ危機をきっかけにはじめたオペレーションも止めたままだ。

つまり「FEDによる株のTOO BIG TO FAIL理論」は、地と足が離れた状態である。そしてその市場を実際に支えているのは、自宅にいる時間が圧倒的に増え、政府からの救済金で新興証券会社のロビンフットに口座を開き、株の売買を始めるようになった若者の存在だ。

同社は2014年に営業開始以来、現在の口座数を約1000万口座まで増やした。そのうち、200万口座が新型コロナウイルスの感染拡大で自宅待機が始まってから急拡大している。そして今や彼らのフローは、ついに市場全体の25%占めるまでになったという(米系最大手のハイフリークエンシー=超高速取引業者による)。

ロビンフットでの口座の平均的残高は4500ドル(約50万円)程度だが、業者は取引を株数ではなく、5ドル、10ドルという小口の金額単位で提供している。そして集まったフローの塊をHF業者へ直接渡す。その時にHFから手数料を取るので、ロビンフットの個人の顧客には無料で売買に参加させているが、それがさらに大きなフローを生む流れである。

こうした今の金融状況を「新時代の到来」と考える向きもある。だが、手法はともかく、中央銀行が引き起こすユーフォリアは過去にもあったのである。筆者は今の状態が300年前フランスで起きた紙幣バブル(リブラ)の「ミシシッピーバブル」と、ほぼ同時に英国で起こった「デッドエクイティスワップ」である南海泡沫(このときは株と国債を交換)合体であると考えている。それについては、次回紹介したい。

滝澤 伯文 CME・CBOTストラテジスト

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たきざわ おさふみ / Osahumi Takizawa

アメリカ・シカゴ在住。1988年日興證券入社後、1993年日興インターナショナルシカゴ、1997年日興インターナショナルNY本社勤務。その後、1999年米国CITIグループNY本社へ転籍。傘下のソロモンスミスバーニーシカゴに転勤。CBOTの会員に復帰。2002年CITI退社後、オコーナー社、FORTIS(現在のABNアムロ)、HFT最大手Knight証券を経て現在はWEDBUSH傘下で、米国の金融市場、ならびに米国の政治動向を日系大手金融機関と大手ヘッジファンドに提供。市場商品での専門は、米国債先物・オプション 米株先物 VIXなど、シカゴの先物市場商品全般。

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