周庭氏逮捕「法の支配」からあまりに乖離する訳

中国の欺瞞が国家安全法の運用に見え隠れする

自由、人権、法の支配といった価値の尊重と擁護は、国際社会という現存の最も大きなコミュニティーに属するものと自称する者であれば、そのコミュニティーの一員として共有しなければならない最低限のルールだ。家庭内での悪質なDV行為の摘発が「家庭内への干渉」にならないのと同様、国際社会の一員が共有しているはずの価値観とルールの冒涜と挑戦を摘発し抗議することは、内政干渉ではないだろう。

国家の「自律」には、人が自分らしく生きられるための普遍的価値や枠組みを踏みにじる「自律」など含まれていない。このルールや価値を共有するかのごとく形式的に標榜しつつ、内実、人権や法の支配を蹂躙し続けるという挑戦的態度をとる中国政府は、今後国際社会というコミュニティーに属し続ける意思があるのかどうかまで問われるだろう。

日本政府や日本社会は国際社会というコミュニティーの住人であり、普遍的価値に真にコミットする者の責任として国際社会に向けて明確に発信することが求められている。これができるかどうかは、合わせ鏡のようにわが国の「法の支配」の“本気度”が問われている。

中国的な価値観や覇権主義にどう向き合うか

日本の「国益」という保守的文脈でも、人権や法の支配というリベラルな文脈においても、香港のこの問題は広い意味を持つ。誤解を恐れずに言えば、データ・グローバリゼーション、スコアリング/監視社会、ライトな独裁インフラの輸出、人権デューデリジェンスに耐えかねる民族差別(経済安全保障)等々、例示すればきりがないが、安全保障だけでなく世界に広がりつつある個人の自律を飲み込もうとする中国的な価値観や覇権主義にどう向き合うかまでもが問われている。

日本という国家がどこまでいってもわれわれ1人ひとりの集合体でしかないとすれば、われわれ1人ひとりがこの問題にどう向き合うかによって、この国の自由や法の支配の在り方が決定づけられることを忘れてはならない。

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