周庭氏逮捕「法の支配」からあまりに乖離する訳

中国の欺瞞が国家安全法の運用に見え隠れする

ここで大きな疑問が頭に浮かぶ。中国政府のいう「法の支配」は、日本人が大学の法学部に進んだ際、最初に習う「法の支配(the rule of law)」とはその中身が異なるのではないだろうか。

一般的な憲法学の基本書を開けば、法の支配とは、われわれ1人ひとりの人権や自由の価値を保障するために「人」による恣意的な支配を排し、法によってこれを規律する原則である。そのためには、人が法を読めば自分がどう行動すればよいかわかる基準を提供していなければならない。

具体的には、その「法」が特定の誰かを狙い撃ちにしたり、同じ行為に対して人によって適用が変わったりするようなものではなく一般性を有していることが必要である(一般性)。

また、法文が曖昧漠然として何が禁止されているかがわからなければわれわれは自由の行使を萎縮するため明確性が要求されるし(明確性)、後出しじゃんけんのように法ができる以前の行為を遡って突如罰されては恣意的な運用が可能になってしまう(遡及処罰の禁止)。

最後に、法の内容および適用においてこれらの要素が守られているかを独立した第三者機関である裁判所によってチェック・監視されていることが望まれる(司法権によるコントロール)。

どこまでは自由でどこからが制限されるのか

要は、法の支配において法を語るうえで重要なのは、どこまでは自由でどこからが制限されるのかが明確にわからなければ、人は自分の人生を自律的に設計すらできないということである。道路交通法でいえば道路ごとに定められた最高速度までスピードが出せるとわかるからこそ、それに反しないように自分で判断・調整してスピードを出し、目的地へ向かう。法による制限が明確にわかってこそ、その中で自由を行使し自分の人生を中長期的に構想できる。

この法の支配を支える重要な価値が、「適正手続=デュープロセス」であり、日本国憲法も31条「適正手続きの保障」として、刑罰を科す法律はそれを受けるわれわれの代表者である国会で制定されている(罪刑法定主義)。加えて、「手続」の適正とその法文の明確性等「内容」の適正を要求しているとされる。

次ページ周庭氏の逮捕は事実上の遡及処罰であり、狙い撃ちだ
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