移動スーパー「とくし丸」が脚光を浴びる理由 外出自粛で増える「買い物困難者」を救えるのか

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事業の仕組みはこうだ。まず、とくし丸は各地域の食品スーパーやGMS(総合スーパー)と契約し、移動スーパーのノウハウやブランドなどを提供する。スーパーは、車両1台につき契約金50万円と月3万円のロイヤリティーを支払う。

商品を届けるのは個人事業主である「販売パートナー」だ。販売パートナーが車両を購入し、スーパーと販売委託契約を結ぶ。とくし丸は顧客開拓や売れ筋商品の情報提供などで販売パートナーをサポートする。

とくし丸での販売価格は、スーパーの店頭より1品あたり10円上乗せされている。利便性を享受する代わりに支払う手数料といっていい。提携スーパーと販売パートナーは商品の粗利益と手数料を分け合う。

販売ドライバーの年収は平均500万円

販売パートナーは、早いときは朝7時からスーパーで商品を積み込み、17時頃まで巡回販売して18時ごろにスーパーへ戻る。販売パートナーは販売を代行している形のため、売れ残った商品は返品でき、それらの商品はスーパーが値下げなどをして店頭で販売する。

とくし丸によると、燃料代などを差し引く前の販売ドライバーの平均年収は500万円程度。ドライバー間での年収差は小さいという。

とくし丸は2020年7月末時点で全国のスーパー132社と提携し、沖縄県以外の46都道府県で575台の車両が稼働している。ただ、5月に沖縄県の地元スーパー・リウボウストアと提携し、47都道府県での事業展開達成は秒読み段階にある。提携スーパーの顔ぶれは人口が減少している地方のスーパーだけでなく、街中に店舗が多い首都圏地盤のイトーヨーカドーや丸正なども含まれている。

東京都の多摩地区を地盤とするいなげやは、2017年10月にとくし丸事業を開始。現在9台を運行しており、2年後には15台にまで増やす方針だ。
同社ではカタログをもとに電話注文を受けて商品を配達する事業を以前行っていたものの、配送委託料の負担が重く黒字化を見込めないため2016年に撤退していた。その後、移動スーパーのノウハウを持つとくし丸と手を組むのが最善と判断し、契約を結んだ。

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