Go Toトラベル是非より日本人に必要な視点 お盆休み、一斉休日取得が観光地をダメにする

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今回のコロナ・ショックは、稼働の平準化に真剣に取り組むいい機会になるでしょう。実際、働き方の見直しが進むにつれて一部企業では、自由度の高い仕事の仕方が選択されやすくなっているようです。密を避ける傾向とも相まって、「休暇を取るなら空いている時期に」というのも今まで以上にやりやすくなると思います。

団体やツアーバスによる旅行はコロナ・ショックを機に回避される傾向もあります。テレワークをするなら環境のいい場所で、というリゾートテレワークも徐々に普及してきており、これも平日や閑散期の稼働率向上に寄与するでしょう。

一方で観光地の繁閑の差をなくすためには、観光地側の努力も欠かせません。地域の面的な魅力を高め地域内での宿泊につなげ、エリア全体で稼働が平準化できるような努力を続けていく必要があります。この際大事なのが、ローカルの人間が気付いていてもうまく活用することができなかった、地域の「隠れた資産」に外部目線での味付けをし、閑散期にも集客できる新たな魅力を作り出していくことだと感じています。

優れた観光資源は長くそこに在住するローカルの人間がいちばんよく知っているはずですが、資金が足りなかったり、そもそも課題認識が弱かったりすることで、これに光を当てることができていないケースも多いのです。

必要なのは、隠れた資産の有効活用と稼働の平準化

ここで気を付けたいのが、何か新しい魅力を作ろうと他のエリアでの流行り物をそのままコピーし、箱モノを一から作り始めるケースです。これだと費用対効果が低くなる可能性があります。本来、その地域ならではの隠れた資産を活用すれば、その魅力だけで集客につなげることができるので、必要な投資額を抑えられるはずだからです。

隠れた資産は生の素材のままで提供するのではなく、より「魅力的なもの」にする必要があります。その際、お客さんの目線に立ちやすい立場の人間、たとえば一度、都市部で就職をし、村の外の世界を見て戻ってきたUターン組や外から住み着いた「よそ者」が改めて活用方法を見直すことで、気付けることが増えるような気がしています。

丸太で作られたベンチが3つ並べられていた岩岳山頂のブナの森の裏(筆者撮影)

手前味噌になってしまいますが私自身が体験した事例を1つだけ紹介させてください。白馬村で「地元で山が一番きれいに見えるのは、岩岳山頂のブナの森の裏」だというのは、住民や登山愛好家の間では知られていました。

その場から眺める白馬三山の圧倒的な景観は「隠れた資産」だと気付けてはいたものの、ただそこには、丸太で作られたベンチが3つ置かれていただけでした。

白馬三山の景観が迫る、特徴的な設計の施設(筆者撮影)

スキーシーズン以外にもゴンドラに乗ってもらい集客できる施設として、その場に展望台を作るのはどうかという案が出ましたが、「単なる展望台だけなら日本各地、ほかの山にも複数ある。ここでしか味わえない体験、特徴を加えよう」という、東京出身で「よそ者」であった私の外部目線を加え、東京都内で人気のベーカリーを誘致。加えて、斜面に切り立つ特徴的な設計のテラスを作ったという経緯があります。

白馬村では、このほかにも山岳景観を生かしたグランピングリゾートの整備など、これまで有効活用されていなかった資源の開発を通じて「オールシーズン・滞在型ツーリズム」への転換を村全体で進め稼働の平準化に取り組んでいます。

地域が抱える課題と地域内の資源を改めて見つめ直し、隠れた資産を有効活用して稼働の平準化を進めていくことはスノーリゾートに限らず、全国の観光地で必要なアクションでしょう。

観光事業者サイドの魅力の向上やプロモーションの遂行だけではなく、休日の分散取得の推進やリゾートテレワークへの支援など行政サイドや各企業、民間サイドからの積極的なバックアップを期待したいところです。

和田 寛 白馬岩岳マウンテンリゾート代表

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わだ ゆたか / Yutaka Wada

1976年生まれ。東京大学法学部卒業後、農林水産省、ベイン・アンド・カンパニーを経て、2014年に白馬で働き始める。

2016~17年の記録的な少雪でスキー場の来場者が激減したことを受け、白馬岩岳マウンテンリゾートの経営者として冬期のスキー客だけに頼らない「オールシーズン・マウンテンリゾート」を目指した改革に取り組む。革新的なアイデアを次々投入した結果、2019年にはグリーンシーズンの来場者数がウィンターシーズンを超え、収益も改善。2022年には18万人(2014年比818%)を超える見込み。

その活躍が大きな話題となり、わずか4年で「ガイアの夜明け」「ワールドビジネスサテライト」など100を数えるテレビ番組に紹介される。

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