少年院で働く児童精神科医がパズルを作った訳 勉強嫌いな子の目が輝く!超簡単な「基礎トレ」

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率直に言って、「この少年たちには生きていくために必要な『学力以前の力』が備わっていない」と感じました。

しかし、これは非行少年だけに限った話ではありません。私は現在、小・中学生の教育相談も受けています。そこで出会う子どもたちの相談は、発達や学習の遅れに関するものが多く、その状況は非行少年たちの学校時代の様子ととてもよく似ていることもあるのです。

また教育相談の場を通じて、お子さんの知能検査などを行うこともあります。その際に、子どもの「見る・聞く」といった認知機能に弱さが見つかれば、それが学業不振につながっている可能性を保護者の方に説明してきました。

「勉強が苦手」は、なまけているせい?

すると、保護者の方の多くは、「それじゃあ、この子が授業中にぼんやりしていたり勉強が苦手なのは、ふざけていたりなまけたりしているせいではないのですね」と納得がいった様子を見せます。なかには、それまでの子どものつらさに思いをはせてか涙を流される方もいます。

そのあとは、決まって保護者の方からこんな質問を受けました。

「認知機能に弱さがあるのは、どうしたらいいですか?」

しかし、そう尋ねられても、以前は、なかなかいいトレーニングを紹介できずにもどかしい思いを抱えていました。当時、書店に行くと「見る・聞く力を育てる」という書籍もありましたが、効果検証が不足していたり、包括的に力をつけさせるものではなかったり……。

そこで、私自身が約5年間にわたり医療少年院でトレーニングを実施し、少年たちに対して手応えの得られた認知機能強化トレーニングを「コグトレ」として提供するようになったのです。

コグトレとは、「認知○○トレーニング(Cognitive ◯◯ Training)」の略称です。○○には「ソーシャル(社会面)」「機能強化(学習面)」「作業(身体面)」が入ります。

認知機能には、「記憶」「言語理解」「注意」「知覚」「推論・判断」という5つの要素が含まれます(下図)。その5つの要素に対応する「覚える」「数える」「写す」「見つける」「想像する」力を伸ばすことが、コグトレの目的です。

次に、認知機能の弱さがどのように勉強の苦手さにつながるか、例を出して紹介しましょう。

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