ウイルスをわかってない人に知ってほしい基本

生物か非生物か、どうやって感染し増えるのか

実は「生物の進化」に関わっているという説も(写真:NicoElNino/iStock)
感染症の元になるウイルスから、健康・暮らしに役立つものまで。世界は微生物が動かしている。中学理科のレベルで、やさしく解説した『世界を変えた微生物と感染症』より、ウイルスのパートを一部抜粋・再編集して掲載する。

中身はシンプル、見た目はフクザツ

ウイルスは、ほかの微生物と同じように感染性をもつ、微生物のような粒子です。そのサイズは微生物の中で特に小さい細菌類よりもさらに10分の1ほど小さくて、例えばインフルエンザウイルスは100ナノ(1ナノは10億分の1)メートルほどです。

「微生物のような」と書きましたが、ウイルスは生物なのか生物ではないのか、その判断が難しい微妙な存在です。内部に遺伝子となる核酸(DNAまたはRNA)をもち増殖しますが、次のように生物という概念に収まらない特殊な性質をもっているからです。

① 細胞構造をとらない
② エネルギーを消費しない
③ 何かの細胞に寄生しなければ増殖できない
④ 条件を整えれば氷や塩のように「結晶化」する

とはいえ、よくよくウイルスたちの性質や構造、ふるまいを観察してみると、やはり「非生物」と断定することもできません。生物と同じように遺伝子を分析してみれば、ウイルスの世界にもさまざまな親戚関係があることが明らかで、それは単なる物質ではありえないことでしょう。

こうして眺めていけば、ウイルスはかつて生物であったものが、遺伝子を子孫に受け継がせる最低限のシステムだけを残し余分なものをすべてそぎ落とした、「生物界随一のミニマリスト」のようにも思えてきます。実のところ、微生物研究者の間でも、ウイルスを生物と考える人も非生物と考える人もいて、議論はまとまっていないのです。

ウイルスの基本的なつくりは、シンプルの極みです。

しかし中身はシンプルでも、外観はとても複雑かつ多様です。球形や円筒形になるもの、多面体になるもの、何やら宇宙船のような複雑な形になるものまでいます。最も典型的なウイルスの外観は正二十面体です。正二十面体は最大の面数をもつ正多面体であり、ターゲットとなる細胞にどの角度からぶつかっても付着しやすいと考えられます。

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