資産価格上昇の起源は「実質金利のマイナス化」 株価も金価格もマイナスコストの資本が支える

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コロナ禍に見舞われた経済でも株式市場は強気だ(写真:REUTERS/Aly Song)

8月に入って為替相場は、7月のドル安一辺倒ともいえる相場つきからは、小康を得ているものの、やはり主要通貨では円とユーロが強含みがちで、ドルはこれになんとか抵抗しているという構図である。また、金価格の上昇も続いている。ドル安と金価格上昇が併存する現状を捉えて「ドルの信認」、もしくは、より視野を広げて「法定通貨の信認」に疑義を投げかける論調まで浮上している。

ゴールドも「金利なし」がハンディでなくなる(写真:REUTERS/Michael Dalder)

筆者はこうした見方は「間違いではないが、後づけの方便だ」と考えている。

例えば、最近最も耳目を集める金価格上昇の理由としては、次の3つが挙げられている。

①新型コロナウイルス終息をめぐる不透明感、そのショックに対して大規模な財政拡張が行われた。そして、このことが、②法定通貨への不信感につながった。また、③金の弱点である「金利がつかない」ことがもはや弱点でなくなった。

名目金利の消滅、実質金利の低下が根源

この①~③の理由はすべてもっともらしいが、決して完璧ではない。例えば、金と同時に景気の先行指標である銅や株まで上昇している現状への説明がつかない。①のような漠然とした不安が本当に強いのだとしたら銅や株が買われる筋合いはない。また、現状では債券価格の上昇(金利の低下)も見られている。法定通貨への不安(②)があるのなら、債券価格が上昇するのは不可思議だ。

結局、これらの矛盾を超えて説得力のある解説を見出すのであれば、「運用可能な流動性が期待収益の高そうな(平たくいえばあとから説明がつきそうな)資産に流れているだけの金融(過剰流動性)相場」というのが最も実情に近いと筆者は整理している。

そのような大まかな理解の下、ドル下落・金上昇・株上昇を同時に説明する理由として最も説得力があるとすれば、それは③がいちばん近いかもしれない。そもそも金融相場を可能にする過剰流動性は金融緩和のアクセルを深く踏み込んだ末に名目金利が消滅したことの結果である。

やはり法定通貨の世界における金利がかつてないほど失われていることは無視すべきではない。より踏み込んでいえば、アメリカに関して名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利がかつてないほど低位で安定していることが、今の金融市場で起きている現象の起源ではないかとの見方が出てきており、これは興味深い。

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