資産価格上昇の起源は「実質金利のマイナス化」 株価も金価格もマイナスコストの資本が支える

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そこでブレイクイーブンインフレ率(BEI)10年を用いて、アメリカの実質10年金利の推移を日次で見たものだが、すでに期待ベースの世界で市場は「長期金利が実質でマイナスの時代」を前提にしていることがわかる。

金も銅も株も債券も、あらゆる資産価格が世界の資本コストであるアメリカの金利がゼロ以下で定着する時代を当てにしているのであれば、「目をつぶって買ってしまえ」という判断になるのも無理はないのかもしれない。

今、金融市場で起きている経験のない事象を細大漏らさずきれいに説明しようとするのは非常に難しいが、アメリカの長期金利が実質ベースでマイナスに定着している事実に起源を求めようとする仮説は相応に説得力があるように思える。

※本記事は個人的見解であり、筆者の所属組織とは無関係です

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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