コロナ時代は「SDGsの落とし穴」に気をつけろ ベニオフCEOの志と日本企業の精神は同じだ

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これらの新SDGs以上に傑出しているのが、中心にある志(パーパス)である。同社は、人々や地球の幸せを第一に優先させ、創造性の成果を活用することをパーパスとして掲げている。

具体的には、地域社会への貢献、LGBTQへの差別撤廃、技術の倫理的な活用などを、本業の中心課題として、社員が一丸となって取り組んでいる。この本には、数々のエピソードが紹介されており、同社の本気度が伝わってくる。そのなかで、ベニオフ氏は次のように語っている。

「時間とともに、従業員、顧客、さらには投資家、パートナー、コミュニティなどのステークホルダーが、あなたが事業を行うに際してどのような哲学を持っているかを知りたがるだろう。あなたに『志』があるかを問うてくるのである」

ベニオフ氏自らも、企業経営者には社会を変える責任があると宣言し、毅然と行動している。自他ともに認める筋金入りの「ソーシャル・アクティビスト(社会活動家)CEO」である。

志本主義の伝道師をめざせ

先の写真のもう1人の経営者である櫻田謙悟氏は、経済同友会の代表幹事であるとともに、SOMPOホールディングスのトップとして、日本を代表する新SDGsの実践者でもある。誌面も残り少なくなったので、その本丸である「志」に注目したい。

同社は「安全・安心・健康のテーマパーク」をパーパスとして掲げている。個人や企業に「万が一」の際の保険機能を提供するだけでなく、「万が一」が起こりにくくする「予防」、そして、日常生活をさらに豊かにする画期的な商品・サービスを生み出し、保険の枠を超えて社会に貢献することをめざす。

「『昔、SOMPOは保険会社だったらしい』と言われたい」というのが、櫻田氏の口癖だ。自らの殻を破って社会価値の創造を志すという同社ならではのMTPである。

実は、この2人には、いくつか共通点がある。ベニオフ氏は、日本への造詣が深い。スティーブ・ジョブズ同様、鈴木俊隆禅師の『Zen Mind, Beginner's Mind』を座右の書とし、同社の世界中のオフィスで「マインドフルネス」を実践している。

一方で、櫻田氏は日本人離れした経営者だ。アジア開発銀行に4年間出向し、世界レベルの経営観と人生観を身につけている。世界に向けて熱いメッセージを送れる数少ない経営者の1人だ。

そしてこの2人は、大の友人同士だという。サステイナビリティやデジタルの話をし始めると止まらない。その舞台は、サンフランシスコ、京都、ダボスなど、まさにグローバルズだ。

コロナ禍の下で、志本主義は資本主義を押し流し、世界の主流となりつつある。日本は古くから、「三方よし」や「論語と算盤」を経営の基軸としてきた。今こそ、日本からベニオフ氏や櫻田氏のような志本主義の伝道師が1人でも多く登場し、世界をリードしていく日が来ることを心待ちにしたい。

名和 高司 京都先端科学大学ビジネススクール教授、一橋ビジネススクール客員教授

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なわ・たかし / Takashi Nawa

1980年東京大学法学部卒業、三菱商事入社。90年ハーバード・ビジネススクールにてMBA取得(ベーカー・スカラー)。その後、約20年間、マッキンゼーのディレクターとしてコンサルティングに従事。10年より一橋大学教授。22年より現職。ボストン コンサルティング グループ、アクセンチュアのシニアアドバイザー、ファーストリテイリング、デンソー、味の素などの社外取締役を歴任。現在、SOMPOホールディングスの社外取締役、朝日新聞社の社外監査役など。著書に『パーパス経営』(東洋経済新報社)、『超進化経営』(日本経済新聞出版社)、『問題解決と価値創造の全技法』(ディスカヴァー21)などがある。

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