コロナ時代は「SDGsの落とし穴」に気をつけろ ベニオフCEOの志と日本企業の精神は同じだ

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現行のSDGsの17枚のカードのようなありふれた目標では、志に火をつけることはできない。すぐには手の届かない崇高な目標でなければならない。シリコンバレーでは、これを「MTP(野心的な変革目標)」と呼ぶ。グーグルではもっと簡単に「ムーンショット」と呼んでいる。日本語では、「北極星」と呼ぶとわかりやすい。

そのような志は、「ワクワク」「ならでは」「できる」という3つの必要条件を備えていなければならない。理性ではなく、感性を揺さぶるパワーが問われているのである。

セールスフォースに見る新SDGs

さて、最初のダボスの写真に戻ろう。なかでも、195cmとひときわ背の高いアメリカ人、セールスフォース・ドットコムの創業者マーク・ベニオフ氏に注目してほしい。私は彼こそ、新SDGsを体現する経営者の1人と見ている。

同社はCRM(顧客関係管理)と呼ばれるソフトウェアを、クラウド上でサブスクリプションサービスとして提供している。B2B企業なのでご存じない方もおられるかもしれないが、この分野では世界トップ企業である。

『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌では毎年、CSV経営を実践するCEOランキングを発表している。ベニオフ氏はその常連で、2019年には、GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)のCEOらを押さえて、堂々世界第2位につけている。

しかし、ベニオフ氏が最も誇らしく語るのは、同年の『フォーチュン』誌「最も働きやすい職場」の全米ランキングで、第2位を獲得したことだ。従業員の92%が、この企業は最も働きがいがあると評価しているのである。

なぜ同社はそれだけ高く評価されているのか。ベニオフ氏の最新刊『トレイルブレイザー』を読むと、その理由がよく理解できる。ここでは新SDGsという切り口から、同社の経営モデルを論じてみよう。

まずサステイナビリティ。同社は主力サービスを通じて、顧客企業のサステイナビリティ活動を支援している。

例えば、2019年9月に発表した「セールスフォース・サステイナビリティ・クラウド(SSC)」は、顧客企業の環境データを迅速に提供している。サイエンス・ベーストがサステイナビリティ経営の最先端の課題となっているなかで、きわめてタイムリーなサービスである。

そして、デジタル。1999年生まれの同社は、いうまでもなくデジタルネイティブ企業である。CAMS(クラウド、アナリティクス、モバイル、ソーシャル)と総称される最新のデジタル技術をフル活用している。例えば、上記のSSCには、「アインシュタイン・アナリティクス」と呼ばれる自社独自のAIが組み込まれている。

さらに、グローバルズ。創業の翌年の2000年には、初めての海外オフィスを日本に開設。トヨタ自動車をはじめとする超優良企業を次々に開拓していった。アメリカとの関係が冷え込んだ中国でも、2019年にアリババとの提携を発表している。

2019年の来日時にベニオフ氏は、次のように語っている。「インターネットでかつてないほどに世界が深く結びついているという事実を無視してはなりません」。そして、「国境は現在の世界を形作っているものではありますが、同時にわれわれは1つのヒューマニティ(人類)なのです」と(「米カリスマ経営者が語る『デジタル変革、米中問題、TIME誌買収』」2019年5月16日 ダイヤモンド・オンライン)。

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