「中国を配慮したリバランス」に説得力なし アジア歴訪でオバマ米大統領が見せた矛盾
マレーシアはASEAN諸国のうち、中国と最初に国交を締結した国。しかも、今年は中国とマレーシアが国交を樹立してから40年の節目だ。昨年10月には習近平国家主席が訪問し、両国は経済連携や軍事交流をいっそう推進することで合意している。つまり、マレーシアは急速に中国に接近している。米国としては、マレーシアとの関係を改善しておきたいところだ。
ホワイトハウスは、トルコの公正発展党(AKP)やエジプトのムスリム同胞団の穏健派などによる中東民主化に失敗した苦い経験がある。米政府筋は「新しいイスラム戦略として、マレーシアを穏健なイスラム民主主義国のモデルにすることを目指している」と語る。台湾の外交専門家は「米国と中国はマレーシアの争奪戦を展開している。マレーシアもしたたかに両国を天秤にかけている」と指摘する。
ライス補佐官とアンワル元副首相が会談
しかし、別の問題がある。英誌『エコノミスト』4月19-25日号が「マレーシアの政治はpoisonous(毒されている)」と指摘したように、政治腐敗が深刻であり、ホワイトハウスにとっては、その是正も大きな関心事だ。
マレーシアを訪問中、オバマ大統領が、政治腐敗の撲滅と民主化デモを組織する非政府組織「Bersih2.0」ら民主化運動組織代表者らと会談したのも、その意思の表れ。さらに、スーザン・ライス大統領補佐官は、3月に同性愛行為の罪で禁固5年の刑を言い渡され、現在上告中のアンワル・イブラヒム元副首相と会談した。
米政府は野党指導者であるアンワル元副首相の有罪判決を、現政権による不当な人権侵害と考えており、マレーシアの民主化推進を求めた。タウンホールミーティングにおいて、オバマ大統領は「非ムスリム人が平等な機会を得られて初めてマレーシアは成功する」とマレー人優遇政策を痛烈に批判したほどだ。
ところが、共同記者会見の席で、ナジブ首相は「オバマ大統領はマレーシアの微妙な国内問題を完全に理解している」と発言。オバマ大統領側も、非政府組織との会談やライス-アンワル会談の詳細について、メディアをシャットアウトする姿勢を見せるなど、現政権に相当程度の配慮をしているようだ。人権を重視するのか、ナジブ首相との連携を重視するのか、どっちつかずの態度を見せることで、矛盾とジレンマを露呈させたといえる。
奇しくもアジアを発った4月29日、ワシントンポスト紙とABCニュースは合同世論調査の結果を発表。オバマ大統領への支持率は3月調査時の46%から41%へ低下し、就任以来最低水準を更新したと報じた。主に、ウクライナ問題への対応を嫌気されたためだ。リバランスへの道は、それほど簡単ではなさそうだ。
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