錦糸町の「銭湯」41歳3代目が探る生き残りの道 コロナ禍に苦しむが応援してくれる人がいる

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 番台に立つ岩崎さんの妻・栄子さん(写真)。7月20日、東京で撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 2日 ロイター] - クラフトビールと生演奏が楽しめ、宿泊もできる。東京・錦糸町で昔ながらの銭湯「大黒湯」を営む新保卓也さんは、そんな新しいコンセプトの共同浴場を作りたいと考えていた。老朽化した近所の姉妹店「黄金湯」を改装し、衰退が続くこの産業を救うことを目指していた。

その矢先、新型コロナウイルスが発生した。

政府や東京都が休業要請を出す中、残り少なくなった銭湯は人々が生活する上で欠かせない施設とされ、営業を続けるよう要請を受けた。

「人件費や光熱費などは変わらないが、お客さん自体が少なくなった」と、新保さん(41歳)は言う。客は6割減少、さらに姉妹店の改装費用が新保さんの不安を募らせた。「経営は赤字でやっていた形」と話す。

温泉は日本で人気のレジャーだが、銭湯は昔から自宅に風呂がない人のためのものだった。浴場は社交の場でもあり、地域社会の絆を深める場でもある。しかし、今はコロナの感染拡大を防ぐため、客は会話を控えている。

「銭湯というのは身分や大人・子供も関係なく、裸で入れるところがいい。文化だと思っている」と新保さん。「でも、やはり変わっていかないといけない」。

銭湯の数は1万8000軒→2000軒へ減少

家庭に風呂があるのが一般的となった今、銭湯の数は1968年の1万8000軒をピークに2000軒近くまで減った。サウナやジャグジー、露天風呂を増設しても、健康ランドやスパのような大型施設には太刀打ちできない。

それでも、この非常時に自転車を毎日15分こいで「新保の湯」に通う客もいる。「コミュニケーションがとれて、裸の付き合いでフレンドリーになれる」と、83歳の常連男性は話す。

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