撮影現場を探してきて許可を取るのも制作部の仕事だが、こういった「お天気問題」が発生すると、急遽、許可なしで「ゲリラ撮影」できる場所を探さねばならない。
「雨が降っていても、晴れのように見える場所」を探して、アーケードのある商店街を慌てて探したり、場合によってはビニールシートで屋根を作って、「晴れ」の状況にしてなんとか撮影を続けられるようにするのも、制作部の仕事になる。
「そうやって、ビニールシートの屋根を押さえていると、『おーい、こっちの奥の人が見切れる(カメラに映ってしまう)から人止めをしてくれ!』と言われたり、身体がいくつあっても足りません。何か現場で困ると、『どうなってるんだ、制作部なんとかしろ!』と言えば済むと思ってる人ばっかりですから」
しかも、このところ、予算削減による合理化で制作部の仕事は増加する一方だという。
かつてはドラマ制作には「特機部」という仕事があったのだが、今は廃止されている場合が多い。ドリー撮影(台車に載せたカメラで移動しながら撮影すること)用のカメラのレール敷設や、イントレと呼ばれる、鉄パイプなどを組み立てて作る足場の設置も、かつては特機部の仕事だった。それが今では制作部の仕事だ。大道具の仕事や、ゴミの管理まで、次第に制作部の仕事になりつつある。
「今までよく死ななかったな」
あまりに多忙な制作部。そのため、命に関わるような事故も発生しているという。
実はドラマの制作現場では、車両を運転するのも原則として制作部の仕事だ。刻々と変わる現場の状況の下で臨機応変に車両を動かすには、そのほうが便利だからという理由らしい。ドライバーを雇うと、いちいち指示を出すのすら面倒だということだ。もちろん、予算がかかるからという理由もある。
Bさんが恥ずかしそうに口を開く。
「実は僕は若いころ、撮影現場の移動中に車を2台大破させています。とにかく眠くて眠くて……。みんな、しょっちゅう事故は起こしていますから、警察に連絡して事故処理をするのはとても素早いですよ(笑)。『オレ、よく今まで死ななかったな』と、みんな思っていると思います」
Aさんによると、今から十数年前に、歩行者をひいて死なせてしまったり、運転しているスタッフが亡くなる事故が4件立て続けに起きたことがあるという。事故は表沙汰にならなかったが、それ以来ドラマの現場では、若くて免許を取り立ての制作進行には運転をさせずにドライバーを雇うことになったそうだ。
しかし、疲労困憊の制作部の人たちが、危険な状態でハンドルを握っている状況は相変わらず続いている。
ドラマの制作部の人たちが、どれほど過酷な状況に置かれているか、おわかりいただけただろうか。そんな彼らを今、新型コロナウイルスの影響による撮影現場の変化が一層追い込んでいるという。
緊急事態宣言の解除後、ドラマの撮影が再開されつつあるが、実は現場は撮影再開を素直に喜んでいられる状況ではないというのだ。さらに、場合によっては今後、地上波テレビからドラマがどんどんなくなってしまう可能性すらあると、彼らは予測している。
いったいどういうことなのか。インタビューの後編では、そのあたりを中心に、詳しく紹介していきたいと思う。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら