世界の製薬会社が新型コロナウイルスのワクチン開発を競い、複数の候補が後期段階の臨床試験に入るなど重要な局面を迎えている。そんな中、ワクチン製造の関連産業では生産能力の大幅な引き上げが喫緊の課題になっている。
製造したワクチンを入れるガラス製の容器もそのひとつだ。それは普通のガラス瓶ではない。ホウケイ酸ガラスと呼ばれる特殊なもので、化学的に安定しているため中のワクチンに影響を与える心配がなく、耐水性、耐酸性に優れ、急激な温度変化や外部からの衝撃にも強い。
特殊ガラス大手のドイツのショットは6月26日、同社が新型コロナのワクチン容器を20億本供給できる体制を整え、すでに世界の大手製薬会社と契約を交わしたと発表した。最初のロットの容器は北米、欧州、アジアの製薬会社に納入予定だという。
大手はショット、コーニング、日本電気硝子など
ホウケイ酸ガラスの製造には高度な技術が必要で、医薬用の特殊ガラス容器はショットのほかアメリカのコーニング、日本の日本電気硝子など少数の大手企業が高い市場シェアを握っている。このため中国の製薬会社は海外からの輸入に頼らざるをえないのが実態だ。
中国企業では、山東省薬用ガラスと正川医薬包装材料が医薬用ガラス容器の2大メーカーだ。しかしホウケイ酸ガラスの生産技術は依然立ち遅れている。山東省薬用ガラスは中国で初めてホウケイ酸ガラスの製造技術を会得したものの、生産能力は限られており、新型コロナのワクチン容器の受注はまだない。
正川医薬包装材料は7月29日、償還期限6年の転換社債を最大4億500万元(約64億円)発行してホウケイ酸ガラスの生産および研究開発に充てると発表した。これを裏返して言えば、同社を含む中国メーカーが新型コロナのワクチン容器を短期間で大量生産するのは困難ということだ。
「新型コロナのワクチンを世界に行きわたらせることができるのは2021年後半になるだろうが、そのときにはワクチン自体よりガラス容器のほうが供給のボトルネックになるかもしれない」。復旦大学附属華山病院の感染症科の主任医師で、上海市の新型コロナ対策専門家チームを率いる張文宏氏はそう懸念している。
(財新記者:于達維)
※原文の配信は7月31日
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