文字の読めない彼が「好き」から辿り着いた天職 21歳ドローンパイロットは弱みを強みに変えた

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父親や兄の趣味がラジコンやプラモデルで、家の中に工具がたくさんあった環境が工夫や試行錯誤しながら分解や改造に没頭する髙梨の意欲を掻き立てた。このときの経験がレース用のドローン制作や、産業用・撮影用のドローンの微調整などに生きている(撮影:小野寺 廣信)

幼い頃より、何事に対してもこだわりが強く、マイペースで、自分の好きなことや気になることが見つかると、そればかりに没頭してしまう性格であった髙梨は、おもちゃや時計をひとりで勝手に分解してしまう、困った子供だったという。

よく遊んでいたプラレールの電車を改造してオリジナルの乗り物を走らせてみたり、戦車のラジコンを改造してカメラをつけ、2階の自分の部屋から映像を見てリモート操作し、1階にいる母に向けて攻撃ごっこをしたりして遊んでいた。

家にいることが多かった髙梨に、ラジコンを趣味とする父親が「外に出るきっかけとなれば」という思いで、ラジコンヘリに髙梨を誘った。それを機に、もともと空を飛ぶ乗り物が好きだった髙梨は、ラジコンヘリに夢中になった。

父親に連れられラジコンメーカー主催の会に参加したり、YouTubeで国内だけでなく海外の人のラジコン技術を動画で学んだりなど、とことん操作技術を磨いていった。

ラジコンヘリを自在に操れるようになった頃、海外の人がプロペラの4個ついた機体にカメラを載せて、空からの映像を遠隔操作でゴーグルから見ている動画を偶然発見する。それが、ドローンとの出会いだった。

はじめて見た機体に「なんだこれは!僕も空からの景色を見てみたい!」とワクワクした。当時小学校6年生だった髙梨は、海外のウェブサイトからドローン機材を購入した際も、親の許可を得るため、なぜ海外で購入しなければならないのか、海外の輸入サイトの信憑性や安全性について、購入する機材は電波法などの法律に対して違法性がないかなどをしっかりと説明できるように準備し、ドローンの購入を交渉したという。

まるで自分がパイロットになって飛ぶように

髙梨はもともとパイロットになりたいという夢を持っていた。ドローンにカメラをつけて飛ばすと、まるで自分がパイロットになって飛んでいるかのような目線になる。日常生活をしていて上下前後左右に自在に動くことはできないが、そんな3次元的な動きがドローンでは可能だ。そして、疑似体験とはいえ自分が「飛ぶ」ということにワクワクした。それも上空1万メートルを超えるような「空」を飛びたいわけではなく、地上500メートルぐらいまでの地上の景色が見える高さに惹かれるようになった。ドローンパイロット・髙梨智樹の誕生だ。

徐々にヘリコプターの種類や仕組みについても興味を持ち始め、工学的なものを勉強するようになる。そして高校2年生からはドローンのレースに出場するようになる。初めての大会で4位に入賞。はじめてテレビの取材を受けた。その後、世界大会にも進んだ。

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