現代自動車「テスラの猛攻」に苛立ちが募る理由 EVシフト本格化も労組が障害になりかねず

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現代自のある幹部によると、同社から見て、テスラが高級車を生産していた段階では、懸念すべき存在ではなかった。だが、17年により価格が安い「モデル3」を発売した時点で、不安が高まったという。

現実の問題として、まだテスラに追いついた既存メーカーは出現しておらず、バッテリーとソフトウエア双方の技術でテスラの優位は揺らいでいない。

さらに現代自の場合、強力な労組がEV事業拡大にとって障害になりかねない。労組が心配するのは、ガソリン車に比べてEVの生産に必要な部品点数や人員が少なくなるので、雇用が脅かされるのではないかという点だ。現代自では、従来車の重要部品は内製化を進めた一方、EVの多くの部品は外注化しているという事情も影響している。

このため労組側は、EVの主要部品も内製化し、自社で組み立て作業をするべきだと要求。労組の広報担当者はロイターに「われわれはEV事業自体に反対しているのではない。コダックは業界がデジタル写真に移行しているのに、フィルムにこだわり破綻してしまった。われわれは、組合員の雇用を守りたいだけだ」と強調した。

既存メーカーの試練

2010年に現代自は韓国政府向けに230台のEVを生産したが、充電設備が整っていなかったため、結局、これらのEVはソウル郊外の研究センターに「お蔵入り」となった、と当時研究開発を統括していたイ・ヒョンスン氏は語る。

韓国初の国産ガソリンエンジンの開発者として知られるイ氏が著した14年の書籍からは、EVはバッテリーのコスト高という面から「非現実的」で、クリーンエネルギー車としては燃料電池車の方が将来性は明るいと考えられていたことが読み取れる。

事実、現代自はトヨタ自動車<7203.T>やニコラなどとともに、早くから燃料電池車を支援してきた数少ないメーカーの1つで、13年には初の量産型「ツーソンFCV」を、18年にはSUVタイプの「ネクソ」をそれぞれ市場に投入した。

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