米国「経済優先した州」と「そうじゃない州」の差 コロナ対策で国が完全に2分している状態
7月中旬、エミリー・ロー医師はボストンの自宅を出て、アイダホに住む両親を訪ねて西へと車で向かった。パンデミックの気配が遠のき、まばらになっていくのを感じながら。
オハイオを抜けると、ガソリンスタンドではマスクを着けた客を見かけなくなった。車の修理のために停まったネブラスカでは、彼女のマスク姿はメカニックに奇妙な印象を与えたようだった。モンタナではマスクを目にすることはなく、バイカーたちが20人ほどの集団で群がっていた。
東海岸から遠ざかるほど、アメリカがウイルスの脅威を「どこか遠くの、重要でもないこと」として扱っているのがはっきりしてきた。
「驚いたわけではないが、ショッキングな光景ではあった」と、マサチューセッツ州で接触追跡システムの準備に春を費やしたロー氏は言う。「私たちは世界的なパンデミックの真っただ中にいるのに、多くの町やビジネスは以前と何も変わらない」。
2分されるアメリカ
アメリカで新型コロナウイルスが広まり始めてから6カ月。北東部の状況は、それ以外の地域と好対照をなしている。
デラウェアからメインにかけての東海岸沿いの州では、新規感染は低い状態が続き、4月のピーク時から大きく下がっている。アメリカには感染者が横ばい、または減少傾向の州が11州あるが、そのうちの6州が北東部に集まっている。
北東部の動きは「ヨーロッパに似ている」と話すのは、ハーバード・グローバル・ヘルス研究所のディレクター、アシシュ・ジャー氏だ。
ヨーロッパ同様、3〜4月に発病と死亡の大波に襲われたアメリカ北東部では、州幹部がしばらくためらった後に大規模なロックダウン(都市封鎖)を断行し、検査と接触追跡に多大な投資を行った。経済的な打撃にもかかわらず、市民は驚くほど協力的で、こうした厳しい措置にもおおむね従った。
アメリカでは新型コロナウイルスの感染状況が地域であまりにも異なっているため、インフルエンザが流行期に入る晩秋には「国が2分された状況になっていたとしても、私は驚かない」とジャー氏は言う。「コロナに首までどっぷりとつかり、医療が逼迫した国と、コロナで多少苦労しているとはいえ、経済の大部分が問題のないレベルで回っている国の2つだ」。