トルマック:ソニーには、エイミー・パスカルというボスがいるんだが、彼女の存在は大きかった。彼女は『スパイダーマン』を心から愛し、サポートしてくれたからね。
アラド:それからチームで制作できるということも大きい。たとえば監督と一緒に、脚本家を誰にするかを決めていくという作業を、スタッフも交じえて密に進めることもできたし、信頼だってしてもらえた。当時はマーベルの革命が起きる前で、『X-MEN』や『ブレイド』などがヒットしていたものの、マーベルコミックス自体は失速ぎみだった。そんな中で、大ヒットしたのが『スパイダーマン』。映画業界としては、コミックスを原作にするということが、ビジネス的にも不安視されていた時代でね。よく「アヴィ、コミックス原作の映画がどれくらいヒットすると思う?」と言われたもんだよ。だからこそ、そういった時代でのソニーの決断力は大きかったのだ。
トルマック:ソニー・ピクチャーズの本社には、大きなスパイダーマンの絵が壁に描かれているんだ。それだけでも、スタジオにとって『スパイダーマン』がどれだけ大切な作品であるのか、ということがわかるというものだよね。
なぜスパイダーマンは愛されるのか
――先日行われた、来日記者会見では、スパイダーマンのコスプレ衣装に身を包んだ小さな子どもたちが、「どうやったらスパイダーマンになれますか?」と質問していた姿が印象的でした。スパイダーマンが子どもたちに愛されるのはなぜだと思いますか?
アラド:スパイダーマンの人気の秘密を説明するのは難しい。僕の孫や、マットの子どもたちもスパイダーマンが大好きだ。主人公のピーターは普通の男の子だ。お金持ちの男の子ではない。両親が亡くなり、おじとおばが愛情たっぷりに育てている。だが彼は頭もいいし、希望を持っている。ピーターは友だち思いの本当にいいヤツなんだ。
でも、なぜそこまで子どもたちが『スパイダーマン』にほれ込むのかはよくわからない。みんなクモはそれほど好きじゃないけど、スパイダーマンならハグだってできる。ほかのヒーローは、もっと暴力的なことをするかもしれないけど、『スパイダーマン』なら親だって安心して子どもに見せることができる。彼は誰かを傷つけたり、殺すことはせずに、弱い者を助ける。悪いヤツですら助けようとする。それこそが、スパイダーマンの魅力であり、愛される理由なんじゃないかな。
トルマック:確かに親としては、そういうことはいつも考える。ヒーローものとしては珍しいが、『スパイダーマン』は、5歳から85歳までが魅力を感じることができる。もともと『スパイダーマン』にはそういう資質があるのだけど、制作陣としても、そのあたりを考えて、子どもたちにも楽しんでもらえるようなバランスをとるようにはしている。
先日の会見に来てくれた小さなお子さんたちもすごく緊張していたけど、スパイダーマンの衣装を着ているからこそ、大勢の観客の前で勇気を出して質問をすることができた。そういった不思議な力をスパイダーマンは持っているのだと思う。特に今回の『アメイジング・スパイダーマン2』は、前作に比べてさらにユーモラスな要素が増えている。特に子どもたちにとっては、世界を救おうとしているスパイダーマンが、悪人たちに軽口をたたく場面が増えているので、そういった部分も楽しんでもらえると思う。
アラド:スパイダーマンのスーツを着た(主人公の)アンドリュー(・ガーフィールド)が、生まれたばかりのうちの孫を抱いている写真があるんだが、きっとうちの孫はスパイダーマンにおびえることはないだろうな、という確信があった。ほかに女の子の孫がいるのだが、彼女はスパイダーマンのスーツを着て走り回っている。それくらい魅力的なキャラクターなんだね。
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