中国リニア「時速600km成功」報道のウソと真実 正解は「時速600kmを目指す車両の試験成功」

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さらに、大都市に集中する人口を郊外に分散させたうえで、ベッドタウンと都市中心部とを結ぶ交通として高速リニアを導入し、より短時間で快適な通勤を目指そう、という考え方も提案されている。

リニアの技術を使った通勤用・市街地用の磁気浮上式鉄道は、愛知県の「リニモ」をはじめ、世界に数例ある。中国でも湖南省長沙市に鉄道駅と国際空港を結ぶ最高時速120km、総延長18.55kmのリニア路線があり、すべて中国の技術で完成させている。

同省にあるCRRCの関連会社、中車株洲は今年4月、長沙のリニア路線を使って時速160kmの中速リニア走行試験に成功した。今回の「高速リニアの走行実験成功」も併せ、中国の技術陣は「自身が持つ技術の進歩に手応えを感じ、プロジェクトの実施を推進し続けるという自信が高まった」と人民日報は伝えている。

中国は2019年、「交通強国建設網要」と称する交通インフラの拡充に向けた綱領を発表し、時速600kmで走る高速リニアに関する合理的なR&Dの実施を目指すと謳っている。また、上海を中心とする長江デルタ地域一体化計画を示す綱領の中に、上海―杭州間を結ぶリニア実現に向けた検討を行うと述べている。

リニア中央新幹線より先に登場も?

中車四方で高速リニアのプロジェクトに携わる丁叁叁氏によると、時速600kmで走る試験用車両とその関連設備は今年中にも完成する見込みとしている。600km走行に耐えられる変電設備も6月下旬に中車四方のリニア試験線に持ち込まれたという。来年には、この試験線を使って、高速リニアのシステム全体の検証を行い、エンジニアリングの確立を目指すとしている。

このペースで開発が進むと、あるいは中国の「国産高速リニア」が意外と遠くない将来、あるいは日本でのリニア中央新幹線開通より先にお目見えする可能性も排除できない。

ちなみに、リニアを含む鉄道の世界最高速度記録は、JR東海が山梨県にある試験線で2015年に樹立した時速603kmだ。いずれにしても中国が時速600km走行を目指すとしたら、日中2カ国間で激しい技術競争が起こることになる。

本来なら、環境アセスメントや試験車両の走行試験などを念入りに行ったうえでの実用化を目指すべきなのだろうが、中国でそういった配慮はどう図られるだろうか。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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