中国リニア「時速600km成功」報道のウソと真実 正解は「時速600kmを目指す車両の試験成功」
今回のテスト車両は中国の車両メーカー、中国中車(CRRC)青島四方機車車輛で製造された。同社はこれまでに最高時速350kmを超える「復興号」をはじめとする高速鉄道車両を開発・製造しているが、リニア実用化の研究・開発(R&D)も行っている。
「時速600kmの高速リニア」についてもすでにモックアップを完成。中国市内で一般市民向けの展示が行われている様子が伝えられている。今回走ったのは中間車両1両だったが、5両編成の開発も進んでいる。
よく知られているように、中国では世界に先駆け、一般旅客が乗れる高速リニアの営業運転を2003年から行っており、上海郊外の浦東国際空港へのアクセス交通として使われている。ただ、この上海リニアはドイツのシーメンスが開発した「トランスラピッド」の技術をそのまま中国で活用したものだった。
2020年5月27日の記事「世界最速から陥落、『上海リニア』無用の長物に?」でも述べたが、そもそも上海のリニアは北京―上海間を結ぶ高速交通を従来の鉄道方式とするか、あるいはリニアを導入するかを比べるために建設した一面もある。
今回実施された「時速600kmの高速リニア」の試験成功を受け、中国国内でも専門性の高い報道が数多く見られるようになったが、それらによると「鉄道方式vsリニア」の選定をめぐる論争が7年近く続いたという。
「中国に高速リニアは必要か」論争
ただ、以前は杭州への延伸構想もあった上海リニアは、現時点では市内中心部や他都市との連結といった延伸の計画はなくなっている。今回の「高速リニアテスト成功」を受け、中国内でも「リニアの導入が本当に必要なのか」という論争が静かに進んでいる。
大きな疑問点として浮上しているのが、「すでに高速鉄道網が発達しているのに、なぜ高速リニア開発の必要性があるか」という点だ。中国の高速鉄道は最高時速350kmで運行し、路線網も約3万kmに達している。
これについて、中国のメディアは「高速リニアと高速鉄道網は利用者マーケットを食い合うことはない」としたうえで、「人々は高速リニアが既存の輸送ネットワークを補足するものと考え、高速鉄道よりも速く、飛行機とも全体の移動にかかる時間でみると大差ない」と、リニアが既存の乗り物とも差別化が図れるとの見方を示している。
例えば、北京―上海間は現在、高速鉄道で最速4時間半、国内線の飛行時間は2時間半だが、リニアなら3時間強で行けることになる。
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