M&A市場はリーマンとコロナ危機でまるで違う

M&A助言のエキスパート、GCAの渡辺社長に聞く

――どんな相談が多いのでしょうか。

会社が潰れそうだから何とかしてくださいという経営者はいない。

わたなべ・あきひろ/1959年生まれ。1981年中央大学商学部会計学科卒業。KPMGニューヨーク事務所などを経て、2004年にGCAを佐山展生氏(現スカイマーク取締役会長)らと設立。アメリカ、日本で公認会計士(撮影:今井康一)

企業を買いたいとか、海外を拠点を整備したいとか、アクティビストに狙われて困っていますとか、さまざまなアプローチがある。ただし社長の本音は、(再編目的で)どこかいいところがあったら探してほしいということではないだろうか。

コロナによってどの会社もダメージを受けている。倒産しそうな会社でも、表向きは「潰れるから助けてくれ」とは言わない。勝ち組と言われている企業でも本当は不安があるから、再編を望んでいる場合がある。本音はまだ見えないが、相談件数の増加からすると、「社長恐怖指数」が明らかに上がっている。

弱い会社が強い会社に買われるのが一般的だが、このコロナでますますわからなくなった。勝ち組だった会社が負け組になったり、逆にここをチャンスと見て、負け組のほうが勝ち組企業を飲み込みに行ったりすることがありそうだ。

リーマンのときはパタッと止まった

――リーマンショックと今回のコロナ禍で違いはありますか。

株価が落ちてないのが今回の危機とリーマン危機の一番大きな違いだ。これがM&A市場に影響を及ぼしている。

リーマンの時は株価が下がって、バリュエーション(企業の市場価値)が下がった。その結果、売り手が動きを止めた。「いい値段がついたら(事業や企業を)売ろう」と思っていたのが、「その値段かよ」となった。

株主にどう説明するのかとか、事業承継だったら創業家一族のなかで「そんな値段で売らない方がいいよ」という圧力が生まれていた。要するに、M&Aが突然パタッと止まった。

――今回はそうではない、と。

特にヨーロッパやアメリカでロックダウンが解除され、ドイツ語圏中心に(事業承継などの)受注が急増している。また、今まで止まっていた(M&Aの)案件が再開してクローズ(締結)できるようになった。リーマンのときはこんなことはなかった。

もう一つの要因は、お金があること。リーマンのときは、売り手が「売る」と言っても買う方にお金がなかった。今は需要と供給がある。M&Aは締結の割合が飛躍的に高まっている。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では、「今、日本企業がM&Aに動かない理由」「M&Aに必要なガバナンスのあり方」「コロナ後の投資家のスタンス」などについても語っている。
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