吉村洋文が大阪都の実現にトコトンこだわる訳 45歳の若き府知事が突き進んできた政治家の道

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塩田:政治家として、今後、実現を目指す挑戦目標、プランをどう構想していますか。

吉村:大阪都構想を実現し、大阪の府・市の二重行政をやめて、東京のほかにもう1つの軸を大阪に作る。大阪、関西を成長させる土台を築き、東京とのツインエンジンで日本を引っ張るような大都市にしていく。政治家としてそれがやれたらいいなとは思いますね。

塩田:大阪都構想は今秋、2回目の住民投票を行うというスケジュールで進んでいると映ります。予定どおり実施になると見通していますか。

吉村:そうです。コロナの感染状況を見ながら、10月か11月にやります。

塩田:これからは「ウィズコロナ(withコロナ)」と呼ばれる「コロナとの同居・共棲」の時代を迎えます。どう対応していくべきだと考えていますか。

社会は非常に危機的な状況になっている

吉村:まず第2波を抑えるために、検査体制の拡充、水際対策、クラスター対策の強化を今、大阪府でもやっています。第1波のときは、わからなかったので、感染拡大防止のためにすべての業種を対象に、社会・経済活動を止める措置を講じました。それで大きなダメージを受けた。日本全体でも、去年の4月と比べて、倒産は15%増です。

大阪市の生活保護の申請も、去年と比べ、40%増えています。失業率も、約2%だったのが、5月は3%に上がっている。失業率が1%上がると、経済を理由に、2000人の方が命を落とされるというのがデータ上の歴史的事実です。休業の方が今、約 400万人増えていますが、対応を間違えると、失業予備軍にもなってきます。

つまり、感染症はいったんは抑えられたけども、社会は非常に危機的状況になっているというのが今の認識です。感染症のリスクよりも、そちらのリスクがものすごく高いのに、なかなか注目されていないのが現状だろうと思っています。

感染症対策をやりながら、社会・経済活動を元に戻していく。僕は今、そのスタンスで進めています。政府もいろいろな経済政策をやっていますが、今のうちに、次の第2波が来たときにどうするのか、戦略や方向性をきちんと定めて、国民にオープンに説明していく。国民に痛みを求めることがあるかもわかりません。

第1波と同じようにすべてをステイさせたら、感染症対策としては抑えられます。でも、それをやったら、経済が成り立たなくなってくる。全員にとって、すべてがマルという選択肢はない。痛みをお願いしなければいけないところも出てくると思います。きちんと戦略を立てて、「皆さん、これで行きましょう」と正面から訴えるべきではないかなと僕は思っています。

塩田:今年6月で45歳になりました。将来、府知事の後はもう一度、国政へ、とお考えですか。

吉村:もちろん府知事の任期中は一所懸命やります。ですが、将来、国政という考えはまったくないんです。大阪の成長を実現させ、その後は橋下さんみたいに民間人で自由奔放に生きるほうが自分に向いているだろうなと思いながらやっています。政治家の仕事を本気でやったら、こんなにしんどい仕事はありません。国政に行きたいとも思わないし、政治家としての野心はないですね。

(撮影:ヒラオカスタジオ)
塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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