久しぶりのユーロ相場上昇をどう読むべきか 米独金利差縮小に伴う見直し買いは続くのか
6月の東洋経済オンラインの筆者記事『ECBは政策金利のマイナス幅を実質的に拡大』でも解説したように、現在、ECBはターゲット型長期流動性供給(TLTRO3)を筆頭として域内銀行部門にマイナス金利付きの資金を潤沢に供給している。貸出実績を上げていれば適用金利のマイナス幅は大きくなるが、貸出実績を上げなくとも相応のマイナス金利は適用される仕組みである。
ということは、マイナス金利で得た資金はまず為替リスクのない域内のユーロ建て金融資産に向かいやすいと思われ、これに追随しようという域外からの資本フローが増えても不思議ではない。
もちろん、これは仮説であり、実際のデータを確認しなければ明言はできないが、事実としてユーロ相場の上昇がはっきりしている以上、域外から域内へのフローが何らかの理由で増えているはずである。
短期的にはいったん巻き戻しも
なお、経験則に照らせば、こうしたユーロを選好するセンチメントは得てして政治的いざこざの中で腰折れしがちである。今回、臨時EU首脳会議を経ても復興基金について細部まで詰めることができなかったことが、いずれユーロ売りを招くターニングポイントになることはないのか、注視したい。
というのも、市場では足元のユーロ買いを復興基金合意への期待が織り込まれた結果だとする解説も見られてきたからだ。現時点で確認可能な短期的な需給環境という意味では、IMM通貨先物取引におけるユーロ買い持ち高(対ドル)は過去最高水準にまで膨らんでいる。短期筋はこれを巻き戻す(ユーロ売り・ドル買いをする)ための口実を模索しているのではないかと察する。
現状のユーロ買いは欧米金利差の大幅縮小を踏まえれば自然な動きではあり、中長期的に見ても、ドルの過剰感からドル安・ユーロ高に向かうことに大きな違和感はないと筆者も考えている。しかしながら、ごく短期的には実効ベースの高止まりや短期的なユーロ買い持ちの大きさを踏まえると「1.15~1.20」のレンジにシフトアップする前に一波乱あるという心構えは持ちたい。復興基金をめぐる政治的な内輪揉めなどは波乱の契機になりうるだろう。
※本記事は個人的見解であり、筆者の所属組織とは無関係です
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