伊藤忠とファミマ「一体化」でも拭えない不安 5800億円を投じるが、具体的な戦略は乏しい

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2年前、伊藤忠は1200億円を投じて、ファミマを子会社化した。だが振り返ると、その成果には疑問符が付く。

ファミマは2016年9月、傘下にサークルKサンクスを持つユニーグループ・ホールディングスと経営統合した。統合直前は、両ブランドを合計すると国内店舗数は1万8240店を数え、業界首位のセブンに肉薄していた。しかし統合後、低収益店の大量閉鎖へと舵を切り、2020年6月末時点で1万6618店まで身を縮めた。2万0880店(沖縄除く)のセブン-イレブンとは差が開いた。

1日当たり1店売上高である日販も伸びていない。2018年2月期に52万円だったファミマの日販は、2020年2月期に52.8万円となったが、セブンとの10万円以上の開きは一向に埋まらない。日販の頭打ちはコンビニ各社に共通する課題とはいえ、子会社化後に目立ったヒット商品は出ていない。

進んでいない「攻めの施策」

ファミマは近年、売り上げを追うのでなく利益を重視。その結果、広告宣伝費など販管費の削減は進んだ。サークルKサンクスとの統合で肥大した組織をスリム化させるため、3月に全社員の約15%に当たる1025人の希望退職を行った。

だが、それらは守りの施策。伊藤忠による子会社化時に語られた、攻めの施策はあまり進んでいなかった。今回のTOB以前に伊藤忠は3000億円強をファミマへの出資につぎ込んだが、すべては回収しきれていない。5800億円という新たな投資を行うからには、伊藤忠自身の株主に対して、投資の明確な成果を示していく必要があるだろう。

TOBに関する資料には、今後5期の業績予測が記されている。2020年2月期の営業収益は5170億円、事業利益は645億円だったが、2025年2月期には営業収益は5619億円(2020年2月期比で8.6%増)、事業利益は779億円(同20.7%増)を見込む。計画達成のカギを握るのは、成長事業の確立となるだろう。

海外事業はその1つに据えられるが、中国では合弁先との関係がこじれ訴訟を起こしており暗雲が漂う。金融やデジタルを活用した新規事業も、ビジョンは長らく語られてきたものの、いまだ日の目をみていない。

ある競合幹部は「新しさがなく他社のいいところをまねてくる『マネリーマート』が変われるのか」と懐疑的な見方を示す。「伊藤忠の人間が的外れなことを言ってきて現場が混乱するのでは、と心配している」と話すファミマの加盟店オーナーもいる。こうした不安を払拭するためにも、TOB後の伊藤忠の一手が重要となる。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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