スラップ訴訟をどう抑止していくか 「反社会的な行為」という認識を広めることが重要
(9)訴えられていない反対者・批判者も、提訴された人たちが苦しむ姿を見て、公的発言をためらうようになる。これをchilling effect(冷や水効果)という。
(10)提訴した時点で批判者・反対者に苦痛を与えるという目的は達成されるので、原告側は裁判の勝敗を重視しない。つまり、訴訟に勝つことは必ずしも目的ではない。
次に、「スラップ訴訟の標的となるのは報道・言論関係の個人や団体だけなのか」という質問について。
マンション建設反対も標的に
標的となるのは報道・言論関係だけではない。スラップ先進国の米国では、ジャーナリストのほかに、一般市民や団体がスラップ訴訟の標的にされている。
たとえば、消費者運動、フェミニズム、平和運動、反差別運動、反公害・環境運動などを行う団体や市民個人である。
日本では、スラップ訴訟の被告となってきたのは、ジャーナリストなどのメディア関係者が多いが、それ以外の例もある。
たとえば、あるマンション開発業者は、千葉県津田沼市でのマンションで建設に反対する運動を行った住民に対し、損害賠償請求訴訟を起こしている。
今後も、地元の反対運動を伴う開発事業や大型プロジェクトなどに、スラップ訴訟が反対運動抑圧の手段として使われる可能性がある。
「米国カリフォルニア州のように日本でも禁止法を作るべきではないのか」という意見。
もちろん望ましいのは、日本でも国がスラップの規制立法を行うことである。だが、それ以前にもやれることはある。それは、メディアが、スラップ訴訟の提訴は反社会的な行為であるということをもっと報道、啓蒙していくことだ。