ポストコロナ、小売業の未来は高品質化にあり 三越伊勢丹「前社長」が語る脱インバウンド

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――原宿の新商業施設「WITH HARAJUKU」(ウィズ原宿)にNTTアドと共同で、カフェと物販の実験店舗を開設しました。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

これはデジタルマーケティングの試験店舗だ。羽田空港は年間8000万人以上の利用者がいるが、その顧客データをどう活用するかは大きな課題だった。顧客の行動情報を吸い上げて分析し、次の顧客と接するときに役立つ店作りがこれから重要だ。

店内にカメラが付いていて、顧客の行動が映るようになっている。どういう人が何を買ったかはこれまでも把握できていたが、試験店舗では、入店して何も買わなかった顧客になぜ買っていただけなかったのかというデータを蓄積していきたい。

インバウンドに頼りすぎた

――小売業のあり方はコロナ禍の前後でどのように変わりそうですか。

コロナ禍の前から百貨店は、業界全体で10兆円ほどあった売上高が半分近くになっていた。小売業トータルの売上高は130兆円で変わっていない。(百貨店から)「カテゴリーキラー」の低価格で高品質な専門店やネット通販へ数字が移っていった。

おおにし・ひろし/1955年東京都生まれ。1979年慶應義塾大学商学部卒業後、伊勢丹入社。2012年三越伊勢丹ホールディングス社長。2017年の退任後、日本空港ビルデング特別顧問に。2018年同社副社長と羽田未来総合研究所社長に就任(撮影:梅谷秀司)

百貨店のシェアはピラミッドに例えるなら最上部。そこをターゲットにすべきだといまでも思っているが、価格競争に紛れてほかの業態と同質化してしまった。わざわざ買いに行くという購買行動はそこにしかないものがあるということだから、いかに同質から脱却し、独自性を持って展開できるかをもっと追求すべきではないか。

――訪日外国人観光客に頼りすぎていた面もあります。

いまインバウンド消費がなくなったと騒いでいるが、もともと金額は4兆円ちょっとしかなかった。日本のGDPの1%に満たないのは、本当にいいものを提案できていなかったからだ。これからはますます「量から質へ」が重要になる。顧客の数が減る分、1人ひとりに買ってもらう額をどうやって上げるか、ということが大事になる。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では、「実店舗とECの融合の在り方」「観光産業はどう変わっていくか」などについても語っている。
橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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