東京が「金融センター」には到底なれない理由 香港混乱が続く中、再び構想が浮上している

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シンガポールに移住するため東京を離れたばかりの対外資産運用の専門家は、「日本が好きな外国人はたくさんいる。だが最後に日本が彼らに要求するのは、たくさんのお金だ」と強調する。

2016年、小池都知事は東京国際金融機構(略称:FinCity.Tokyo)というシンクタンクを設立し、東京を国際金融センターにするという目標のもと、国内外の金融業界のトップを集めた。「4年経過し、この目標が想像以上に複雑に絡み合っている問題だと分かった。出入国管理は法務省、税金は税務当局、年金基金は厚生労働省など、複数の省庁とのやり取りが必要だ。官僚は賢く、問題をしっかり見極める。 しかし、この国はサイロ化(縦割り)しすぎている」と、Fincity.Tokyoの有友圭一専務理事は語る。

グローバルで熱意にあふれる同氏は、日本が掲げる国際金融都市構想の最も適した提唱者である。しかし、有友氏が勤める同機構は資金提供するための充分な数の企業も見つけられていないのだ。

同機構の顧問は、「日本郵政公社が複数のファンドに出資するはずだったのだが、要求された条件があまりに多かったため実現できなかった。日本の資産運用家は教育することさえ難しい」と嘆く。

東京が香港になれる可能性は限りなく低い

コール氏は、「カリフォルニアのカルパースや、シンガポールのテマセクといった公的資金を基にしたファンドは、対外資産を運用するファンドに投資している。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や日本生命、東京都も同じことをすれば、国際金融コミュニティの信用を得られるのに、決してそうはしない」と語る。

香港の衰退から利益を得ようと狙う日本に対し、白井氏は警鐘を鳴らす。

「香港は依然として中国本土への唯一の門戸であり、多くの中国系大企業が資金を集める場となっている。中国政府としても、香港の金融センターとしての沽券を傷つけるのは望ましいことではないだろう。

仮にそうなったとしても、日本の投資家がいまだにアジアよりアメリカやEUの金融資産を好んでいることからすれば、東京が香港にとって代わる可能性はかなり低い。香港は金融センターとしての地位を保ち、いくつかの機能を東京ではなくシンガポールに移転するものとみられる」。

日本の機関投資家は配当の少ない商品で顧客に多額の手数料を払わせ続けている。GPIFの運用資産の4分の1は依然として無利子国債のままだ。東京に拠点を置く資産運用会社ロジャーズ・インベストメント・アドバイザーズのエド・ロジャーズ氏によれば、2001年から2019年まで運用実績を見ると、GPIFに資産を預けた場合は2.3倍に、カルパースでは3.2倍に、イェール大学のエンダウメント・プログラムでは6.2倍に増えていたということだ。

高齢化が進む日本では、効率的な資産運用の必要性がますます高まっている。このままでは、日本の年金受給者はより貧しくなっていくばかりだろう。「私は楽観している。私が信じなければ、誰が信じるのか」と、有友氏は話す。 自民党の木原衆議院議員も同意する。「これが日本にとっては最後のチャンスだ」。

レジス・アルノー 『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員

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Régis Arnaud

ジャーナリスト。フランスの日刊紙ル・フィガロ、週刊経済誌『シャランジュ』の東京特派員、日仏語ビジネス誌『フランス・ジャポン・エコー』の編集長を務めるほか、阿波踊りパリのプロデュースも手掛ける。小説『Tokyo c’est fini』(1996年)の著者。近著に『誰も知らないカルロス・ゴーンの真実』(2020年)がある。

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