東京が「金融センター」には到底なれない理由 香港混乱が続く中、再び構想が浮上している

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「香港での混乱に加え、シンガポールが一段と権威主義的になる中で、日本は地理的な要素も含めて優位に立つ。日本は民主主義的かつ、法の支配に基づいた、自由で安全な社会だ」と、自民党の木原誠二衆議院議員は話す。同議員はイギリスで教育を受けた比較的若い、外務副大臣の経験もある海外通だ。

だが、東京が真に国際的な金融都市だった期間は短く、その重要性はこの15年間で失われてしまった。対外資産運用の専門家によると、「バブル崩壊後、香港とシンガポールが台頭する前、日本は、金融業を洗練する必要から、外国人を招いて市場を近代化した。2000年にはアジアを拠点とするヘッジファンドの80%が東京に拠点をおいていた。ところが、2005年前後に出ていってしまった」。

東京が「凋落」した原因

この凋落にはさまざまな原因がある。第1に、金融業はまだ日本の主要産業になっていないということだ。アーカス・リサーチのアナリスト、ピーター・タスカー氏は「シンガポールや香港では、金融業が経済に占める規模が大きい。しかし、日本で最も主要な産業は製造業だ。ほとんどの家庭は金融商品を保有していない」と話す。

さらに、コール氏は、「ローソンやトヨタのCEOに話を聞くと、彼らが自社製品で業界トップに立っていることを誇りとしているのがわかる。一方で資産運用会社のCEOは、そこまで誇らしくしていない。というのも、日本では金融業に対し悪い印象があるからだ」と指摘する。

第2に、今日の日本は金融の最も基本的な要素である、海外からの人の流入とリスクに対して過剰に警戒している。日本人の英語力は高いとはいえず、東京の外国人人口は全体の4%に過ぎない。東京はそもそも国際都市ではないのだ。また日本政府はリスクを避けている。

「日本は失敗に厳しい文化だ。しかしこの業界で大きな成功を収める人は、10回のうち8回は損をしている。孫正義氏は良い例だ。彼が富豪になれたのは、数回の投資で莫大な利益を生み出せたからに過ぎない」と、専門家は語る。

日本の行政手続きによる負担は、香港やシンガポールと比べてかなり重いと3つの金融市場を知るすべての金融業者は口を揃える。「地元の投資家と資産運用会社の間には仲介人が多すぎる」と、1人は言う。

しかし、海外の金融関係者が日本の金融を敬遠する一番の理由は税金だ。日本における税負担軽減措置はいくつもあるが、どこからでも仕事ができる今、東京で働くことにメリットを見出すほど魅力的ではない。

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