カニエ・ウェスト「次の米大統領狙う」男の正体 史上初「黒人ラッパー大統領」誕生の可能性も

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実際、彼が「Make America Great Again」の野球帽をかぶってトランプとツーショットを撮った時には、黒人のトランプ支持率が11%から倍の22%に上がったのである。

だから、ウェストの立候補は、オバマの副大統領だったという事実に恩恵を受けているバイデンにとって脅威となりえるのだ。黒人票のおかげもあって厳しい民主党の候補者争いを勝ち抜いてきた彼が、その大事な支持層をいくらかでも失うことになれば、結果的にトランプに有利に働く。事実、ウェストの本当の狙いはそこにあるのではとの声も、すでに聞かれている。

「ウェスト大統領」の可能性ゼロではない

仮にもし本当にウェストが大統領を狙っているにしろ、チャンスは「完全にゼロ」というわけではない。

そもそもトランプが出馬したときだって、アメリカのメディアは彼をずっとジョーク扱いをしてきたのだ。「You’re Fired! (お前はクビだ!)」のキャッチコピーでリアリティ番組のスターとなった彼が本当に大統領になるとは、誰も予測していなかった。

とはいえ、トランプの場合は共和党からの立候補だったので、ウェストが独立候補として出るなら条件は同じではない。しかし彼が今後、そこをクリアする方法を考え出す可能性もなくはない。

もしリアリティ番組のスターが2回続けて大統領になれば、アメリカの将来は、それこそ目も当てられないことになる。キムが「ホワイトハウス限定版」などとうたって服やインテリア、香水を出したら、もはやこの世の終わりだ。

SFドラマ『スター・トレック』のオリジナルキャストで日系人俳優のジョージ・タケイは、「カーダシアンがホワイトハウスに入るって? 悪いけど、僕が宇宙船の隊員である間はやめてくれよ」とツイートした。

『スター・トレック』の舞台は22世紀半ばから24世紀にかけて。彼の言うとおり、少なくともその時まではやめてくれないだろうかと真に思う。本音を言うなら、24世紀の終わりにも、そしてその後にも、やめてほしい。世の中のために、正しい意図と資格を持たない人がリーダーになることはもう絶対に起こってほしくないと、個人的に強く願っている。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

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