トヨタが「電気自動車」に消極的にみえるワケ EV普及率を2050年で1割と低く見積もる理由

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話を2020年6月時点に戻そう。トヨタのEV戦略の基本は、2015年10月に公開し、その後に一部改訂された「環境チャレンジ2050」だ。量産型の電動車について、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、EV、燃料電池車という順で2050年に向けて市場が徐々に拡大するという将来図を描く。

トヨタ「環境チャレンジ2050」でのトヨタ電動化普及ロードマップ(写真:トヨタ自動車)

EV普及率は、2050年時点でもトヨタ電動車全体の1割程度とかなり慎重に予測するが、そうした低い見積りの背景には、当面はディーラーから「EVを売りたい」という声が一気に高まることがなく、「規制ありき」の市場の成長には限度があるとの見方がある。そのうえで、「車両電動化技術の特許実施権の無料提供」(2019年4月)を発表し、企業間(B2B)ビジネスとしてEVにもつながる手持ち技術の換金化と、電動化技術に関する世界的なコンソーシアムの構築を着々と進めている。

他方、自動車業界全体を俯瞰すると、ホンダは中型以上のEVで、GMが主導権を握るかたちでEV技術「アルティウム」を共同開発するとしている。また、そのGMは自社ブランドとしてGMC「ハマー」、キャデラック「リリック」などの高級EV量産を決定。フォードは「マスタング マッハE」の2020年夏導入など、アメリカではテスラ包囲網が具体的に動き出している。

欧州では、ジャーマン3(ダイムラー、BMW、フォルクスワーゲン)は、フォルクスワーゲンが2016年に打ち出したEVシフト戦略のもと、大手サプライヤーを巻き込み、来るべきEV時代の主権を狙う。

「EV C.A.スピリット」が握る?

果たしてトヨタが「Wait & See」を踏まえて、日米欧で一気にEV量産化に動くときが来るのだろうか。それとも、日産「アリア」が、そのきっかけを作るのか。また、マツダやデンソーと連携してEV開発進める「EV C.A.スピリット」の実働体制は今後どうなっていくのか。

2019年11月の公開されたトヨタの超小型EV。2020年冬頃に量産化の予定(筆者撮影)

2019年11月、トヨタの東富士研究所で「UX300e」を体験試乗した際、担当エンジニアは「これは既存のUXをEV化したもので、EV開発としてはここまでの話。これから先のトヨタ全体のEVプラットフォーム(基盤)はEV C.A.スピリットが受け持つ」と説明していたのだが……。

コロナ禍での生産調整からの回復基調が見えてきそうな夏以降、改めてトヨタ各方面への取材を進めていきたい。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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