宮本恒靖が語る、日本代表の「守備」の弱点 どうすればW杯での失点を防げるのか

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――最後に、FIFAマスターについて聞かせてください。世界ナンバー2のスポーツ学のエリート大学院と言われています。どんな人が集まるのですか?

サッカークラブに勤めている人、弁護士、メディア界の人といった感じです。中国サッカー協会の広報もいました。なぜか人類学の博士も(笑)。自分のキャリアに箔を付けて、スポーツビジネスにかかわっていきたいという人たちが中心でした。

――卒業生はどんな道に?

FIFAやIOC(国際オリンピック委員会)を目指す人が多い。サッカーだけでなくスポーツ界全体が対象なので、W杯のTV放映権を扱うインフロント社や、国際スキー連盟に入る人もいました。

スポーツ業界の就職は世界的に競争が激しくなっており、卒業してもすぐに職を見つけるのは簡単ではないのですが、プレゼンに来てくれた卒業生が「今は苦しいだろうけれど、2~3年待てば必ずいい結果が待っている」と言っていた。卒業生同士でネットワークができて、最新の求職情報を得られるメリットがあります。

アジアのすべてのアスリートに勧めたい

――『日本サッカーの未来地図』では、マーケティングの授業が最も面白かったと書いていましたね。マドンナが経営戦略的に強みと弱みを分析して、パワフルなバックダンサーをつけて美しさを際立たせてブレークした、といった内容が印象的でした。

自分がいちばん期待していたところです。イタリアの服飾ブランドを立て直した方が講義に来たりしました。同級生の中からはスポーツに当てはまりづらいという意見もありましたが、個人的には面白かったですね。

――NBAのシカゴ・ブルズの経営戦略の中で、何を根幹に据えるべきかという基準で、①価値がある、②レア、③真似できない、④代わりになるものがない、という4項目を紹介していますね。FIFAマスターの授業を追体験できるという意味で、宮本さんの著書もこの条件を満たしているのではないでしょうか。スポーツビジネスを学ぶうえで教科書のひとつになると思います。

元選手として貴重な体験をさせてもらったことは確かです。すぐにこの経験が生きるわけではないですが、今後につなげて行きたいですね。

――今後、引退した選手がFIFAマスターへの留学を考えていたら勧めますか?

日本のサッカー選手だけでなく、アジアにいるすべてのアスリートに勧めたいです。国際的なスポーツ連盟で働くアジア人は、まだそれほど多くない。その数を増やすためには、スポーツの世界がどう動いているのかを、ヨーロッパで見ることが必要だと思います。

(撮影:大塚一仁)

木崎 伸也 スポーツライター

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きざき しんや / Shinya Kizaki

1975年東京都生まれ。中央大学大学院理工学研究科物理学専攻修士課程修了。2002年夏にオランダに移住し、翌年からドイツを拠点に活動。高原直泰や稲本潤一などの日本人選手を中心に、欧州サッカーを取材した。2009年2月に日本に帰国し、『Number』『週刊東洋経済』『週刊サッカーダイジェスト』『サッカー批評』『フットボールサミット』などに寄稿。おもな著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『クライフ哲学ノススメ 試合の流れを読む14の鉄則』(サッカー小僧新書)など。

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