「飲食店の路上利用緩和」ができない街の末路 単なる飲食店救助策と捉えると見誤る

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もう1つの道路が活用できるかどうかは、歩道幅のある中心部の道路周辺が現状どうなっているかがポイントとなる。まちによっては中心部の大通り沿道がマンション街になっていることもあり、そうなると稼ぐ空間を作るのは難しくなる。マンションの前を使われるのを嫌がる住民が出る可能性が高いからだ。

中心部がシャッター商店街になっている場合も使いにくい。中心部の、かつて栄えた商店街の場合、店は閉めていても大半の商店主は経済的には困っていない。中心部の空家問題が硬直しているのはそのためだ。過去の栄光を考えると空いていても安く、若い人に貸すなどという発想は思いもよらないのだ。

だが、中心部の商業地の価値下落はまち全体の地価の下落につながる。時系列で路線価図を眺めていくと、ある自治体で最も高い地点の価格の下落は自治体全体の下落につながっている。

好景気下で住宅地が値上がりすることはあるが、住宅地単体での値上がりはほとんどなく、商業地の牽引は必須。そのためには道路でもなんでも使える場所を使って、稼ぐ空間を増やさなければコロナ禍以降の地価維持、上昇は難しいのである。

道路を使う人の「意識」も重要に

もう1つ、今回の緊急措置をうまく活用し、自分の住むまちの価値を下げないためには一人ひとりの行動も大事。それは道路を使う人と道路管理者、警察などの関係者の間に信頼関係を取り戻すことだと西村氏は話す。

かつて、車が道路の主役になる以前は、道路は子どもの遊び場であり、ご近所さんとの立ち話の場であり、将棋や夕涼みの場であり、それを利用する人の自発的な清掃などで維持されている空間だった。公有地ではあるものの、私有地との境界は曖昧で、その分、豊かでもあった。

それが公共空間の管理責任が問われる社会となり、道路でのトラブルが道路管理者へのクレームにつながり、警察は事故が起こらないように規制を強化するようになった。それを一度、曖昧な空間を作ろうというのが道路の活用だが、実現するためには使う人が安全にルールを守って使うことを示し、互いの信頼関係を取り戻す必要がある。

使うだけ使ってゴミだらけにし、事故やトラブルが多発するようなことになっては活用への道は遠のくことになる。

今回、緊急措置は11月末日までだが、この間の使い方次第では延長その他の可能性はありうる。また、緊急措置とは別に道路法改正で歩道をテラスなどとして使うことができる「歩行者利便増進道路」が2020年秋から指定できるようになり、道路の使い方はこれから大きく変わる。それをうまく利用できるかどうかは、自治体はもちろん、私たち一人ひとりにもかかっているのである。

中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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